【結論】「連絡が取れない共有者」がいても、売却や整理は可能。ただし“普通の売却”より時間と手間がかかるため、早めに専門家を入れて法的手続きも視野に動くべき
共有名義の不動産で、
- 共有者の一人が行方不明・音信不通
- 連絡先は分かるが、電話にもメールにも一切応じてくれない
- 海外在住で、連絡は取れるが書類のやりとりが全然進まない
といった状況は珍しくありません。
こうした「連絡が取れない共有者」がいると、
- 全員の同意が必要な売却・建替え・担保設定などが止まってしまう
- 固定資産税や管理負担だけが残っている人に偏る
- 時間が経つほど、相続や代替わりでさらに状況が複雑になる
という悪循環に陥りがちです。
一方で、
- 所在調査
- 不在者財産管理人の選任
- 共有物分割請求(裁判)
- 自分の共有持分だけの売却
など、「連絡が取れない共有者がいても前に進めるための手段」はいくつもあります。
大事なのは、
- 「本当に連絡手段がない」のか、「単に返事をくれていない」のか
- どの程度の時間とコストをかけてでも整理したいのか
- どこまで法的手続きを使う覚悟があるのか
を冷静に整理し、感情論ではなく“現実的な落としどころ”を決めることです。
なぜ「共有者と連絡が取れない」と売却が止まるのか
売却には原則「共有者全員の同意」が必要
共有不動産を
- 売却する
- 建替える
- 抵当権を設定する
といった「重要な処分・変更」を行うには、
共有者全員の同意(合意)が原則必要になります(民法上の原則)。
そのため、
- 一人でもハンコを押さない人がいる
- そもそも連絡が取れない人がいる
という状況だと、
通常の不動産売却のスキームでは、
「売買契約書に全員の署名捺印が揃わず、決済まで進めない」
という“詰み状態”になってしまいます。
「連絡が取れない」にも種類がある
実務では、「連絡が取れない」は大きく次の3パターンに分かれます。
- 本当に所在不明
- 住所不明・転居先不明
- 電話番号もメールも不明
- 家族・親族にも連絡先が分からない
- 所在は分かるが、音信不通・無視
- 封書は届いているが返事がない
- 電話には出ない/出ても話をはぐらかす
- 売却や整理の話題になると一切応じない
- 海外在住・高齢・判断能力の問題などで“事実上”手続きが進まない
- 海外在住で書類のやりとりや署名が大変
- 高齢で判断能力に不安があるが、後見制度を使っていない
- 長期入院・施設入所で連絡・意思確認が難しい
どのパターンかによって、
取り得る法的手続きや必要な専門家が変わってきます。
放置すると何が起きる?「連絡不能共有者」の放置リスク
リスク① 共有者がさらに増え、「誰もコントロールできない不動産」に
所在不明者を含めた共有状態を放置すると、
- その共有者が亡くなり、さらに子ども・配偶者に相続
- 「行方不明のままの共有者の相続人」が登場
といった形で、共有者の数だけ増えていきます。
結果として、
- 何かを決めるにも、誰に連絡すればいいのか分からない
- 誰が何分のいくつ持っているのかも整理できない
という、ほぼ動かせない“塩漬け不動産”になっていきます。
リスク② 空き家・老朽化・税金負担だけが膨らむ
- 実家が空き家のまま
- 誰もメンテナンスしない
- 固定資産税だけが毎年かかる
といった状態が続くと、
- 建物の老朽化・倒壊リスク
- 雑草・不法投棄・防犯上の問題
- 近隣からのクレーム・自治体からの指導
が現実の問題として出てきます。
実務では、
「連絡不能共有者がいるせいで、
売ることも、解体して更地にすることもできない」
という相談が非常に増えています。
リスク③ 行政・法律の側から“動かされる”可能性も
空き家対策・所有者不明土地問題への対応として、
- 特定空家への固定資産税優遇の解除
- 長期放置された土地・建物について、
行政や裁判所主導での管理・処分制度の創設
など、「持っているだけで不利」な方向への制度変更も進んでいます。
何もしないと、
- 自分たちの意思とは関係なく、
行政や裁判所のルールで処理される - しかも不利な条件(市場価格以下)で処分される
という未来もあり得ます。
「連絡が取れない共有者」がいても前に進むための解決策
ここからは、実務でよく取られる解決策を、
現実的な順番で整理します。
解決策① まずは「本当に連絡手段がないのか」を徹底確認する
1. 登記情報・戸籍・住民票・附票などで所在を調べる
- 法務局の登記簿で、最後に分かっている住所を確認
- 市区町村で住民票・除票・戸籍の附票を取り、
転居履歴や現在の住所を追う - 必要に応じて、本籍地の戸籍から相続関係も確認
ここは司法書士・弁護士に依頼して進めるケースが多いです。
2. 家族・親族・近隣への聞き取り
- 兄弟姉妹・いとこなど近い親族
- 近隣住民・古くからの知り合い
を通じて「今どこにいるのか」を探るのも現実的な手段です。
この“地道な調査”だけで解決することも意外と多いので、
いきなり法的手続きに行く前に、一通りやっておく価値があります。
3. 内容証明郵便・書留などで正式な連絡を試みる
「所在は分かるが、応答がない」タイプの場合は、
- 売却・整理の提案内容
- いつまでに返答してほしいか
- 返答がない場合にこちらが取り得る選択肢
を整理したうえで、
内容証明郵便で正式に通知することも有効です。
- 後々「聞いていない」と言われるのを防げる
- 裁判になったときに「誠実に連絡を試みた証拠」になる
という意味でも重要です。
解決策② 不在者財産管理人の選任を検討する(所在不明の場合)
「徹底調査しても所在不明・連絡不能」という場合、
現実的な選択肢の一つが、
- 裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てる方法です。
不在者財産管理人とは?
- 長期間行方不明の人(不在者)に代わり、
その人の財産を管理するために裁判所が選ぶ人(多くは弁護士) - 管理人は、不在者の利益を守りながら、
財産(持分)の売却同意などの判断も行うことができる
(個別の権限は、裁判所の許可内容による)
これにより何ができるか
- 「所在不明の共有者の代わり」に、
管理人が売却への同意・手続きに参加できる - 共有者全員の印鑑が揃わないために
売却できない状態を解消できる可能性がある
注意点
- 家庭裁判所への申立てが必要で、
手続き・期間(数ヶ月〜)・費用(管理人報酬等)がかかる - 必ず売却OKになるわけではなく、
「本当に売却が不在者の利益になるか」を裁判所が慎重に判断する
とはいえ、“完全な行き止まり”を打開する有力な手段の一つです。
解決策③ 共有物分割請求(裁判)で強制的に共有状態を解消する
「連絡不能の共有者がいて話し合いも不可能」
「他の共有者も含めて、どうしても合意できない」
という場合の最後のカードが、
- 共有物分割請求(民法上の制度)
です。
共有物分割請求とは?
- 各共有者が、「この共有状態をやめたい」と裁判所に申し立てることができる制度
- 裁判所は、
- 現物分割(物理的に分けられる土地など)
- 代金分割(売却して現金で分ける)
- 競売による分割
のいずれかの方法で、強制的に共有を解消させる
連絡不能共有者がいても請求できるのか?
- 相手方(他の共有者)の所在地等をできる限り調査したうえで、
裁判所に提起します。 - 不在者の場合、前述の不在者財産管理人を選任したうえで進めることもあります。
メリット
- 話し合いが不可能な状態からでも、法的に前へ進めることができる
- 最終的に「誰がどの部分を取得するか/いくら受け取るか」が確定する
デメリット
- 時間と費用、精神的負担が大きい
- 競売による分割が選ばれると、市場価格より安く売れてしまうことが多い
そのため、
「話し合いでの解決を最大限やりきったうえで、
どうしても無理なら使う最後の手段」
として位置づけるのが現実的です。
解決策④ 自分の持分だけを「共有持分」として売却する
「連絡不能の共有者もいるし、他の共有者とも話がまとまらない」
「でも自分はもうこの不動産から降りたい」
という場合、
- 自分の共有持分だけを、
共有持分買取業者や投資家へ売却する
という選択肢も現実的です。
何ができるか
- 他の共有者の合意なしに、自分の持分だけ現金化できる
- これ以上、固定資産税や管理の負担を背負わなくて済む
- 長年のストレスから解放される
注意点
- 価格は「不動産全体の価値 × 持分割合」より低くなるのが普通
- 買い取った業者が、他の共有者に対して
- 買取り交渉
- 共有物分割請求
などに動く可能性があり、
共有関係の雰囲気が変わることもある
とはいえ、
「話し合いも法的手続きも大変すぎる。
多少安くても、とにかく今の負担から抜けたい」
という人にとっては、十分検討に値する出口です。
解決策⑤ 「不動産全体をどうしたいか」の本音を整理しておく
どの解決策を選ぶかは、
- 本当はその不動産をどうしたいのか
(残したい/手放したい/どちらでもよい など) - どこまで時間とお金、精力をかける覚悟があるのか
- 誰との関係をどこまで守りたいか/壊しても構わないか
によって変わります。
自分に問いかけたいポイント
- 「この不動産の件を、あと何年抱え続ける覚悟があるか」
- 「税金や管理費を、あと何年・いくらまでなら負担できるか」
- 「親族関係・共有者との関係が多少悪化しても、決着をつけたいか」
これを紙に書き出してみると、
- 徹底的に話し合いを優先すべきか
- 法的手続きも視野に入れるべきか
- 自分だけ持分売却で抜けるのか
がだいぶ見えてきます。
専門家コメント
ホームワーク株式会社 代表取締役(共有・相続・問題案件担当)
- 共有者不明・連絡不能・相続人多数など“問題を抱えた不動産”の売却・整理を多数サポート
- 弁護士・司法書士・税理士と連携した、権利関係整理型の案件に強み
コメント
「『共有者の一人と連絡が取れない』というご相談は、
ここ数年、本当に増えています。
多くの方が、
- 『自分一人ではどうにもならないから』
- 『親族関係を壊したくないから』
という理由で、何年も手を付けられずにいるのが実情です。
ただ、実務の感覚から言うと、
- きちんと調べれば“本当に連絡不能”ではないケースも多い
- “本当に連絡不能”でも、
不在者財産管理人や共有物分割請求など、前に進める手段はある - どうしても整理しきれない場合でも、
自分の持分だけを売って降りるという選択肢は残されている
と感じています。
大切なのは、
『連絡が取れないから、何もできない』と決めつけて
放置し続けないこと
です。
『うちの場合、どこまで可能性があるのか』『どんな順番で動くべきか』は、
登記・戸籍・現地の状況などを拝見して初めて判断できます。
“今すぐ裁判”や“今すぐ売却”を決める必要はありませんので、
まずは現状の棚卸しと、取り得る選択肢の整理から一緒に始めていければと思います。」
よくある質問(FAQ)
Q1. 共有者の一人が完全に行方不明です。それでも売却はできますか?
A. 可能な場合があります。
- まずは住民票・戸籍・附票などで調査
- それでも所在不明なら、不在者財産管理人の選任を申立て
- 管理人を通じて売却手続きに参加してもらう
という流れが典型的です。
手間と時間はかかりますが、「まったく道がない」わけではありません。
Q2. 共有者の一人が、書類にまったくハンコを押してくれません。どうすれば?
A. 話し合いと説明を尽くしてもダメな場合、
- 共有物分割請求(裁判)で共有関係の解消を求める
- 自分の共有持分だけを売却して、共有から抜ける
といった選択肢があります。
どちらが良いかは、関係性・金額・時間の許容度によります。
Q3. 不在者財産管理人を選任すると、必ず売却に応じてもらえますか?
A. 必ずではありません。
管理人は、不在者(行方不明の共有者)の利益を守る立場なので、
- 売却価格が妥当か
- 売却が不在者にとっても有利か
などを見たうえで判断します。
ただ、「そもそも手続きが進まない」という状態から一歩前進できる可能性は高いです。
Q4. 共有物分割請求をすると、物件は必ず競売になりますか?
A. 必ず競売になるわけではありません。
裁判所は、事情に応じて
- 現物分割
- 売却して代金を分ける
- 競売にかけて代金を分ける
などを選びます。
ただし、宅地・建物では競売が選ばれることも少なくなく、
その場合、市場価格より安く売れてしまう可能性がある点は要注意です。
Q5. 自分の共有持分だけを売った場合、他の共有者に迷惑はかかりませんか?
A. 法的にはあなたの権利ですが、
- 買主(業者・投資家)が他の共有者に対して買取り交渉や分割請求を行う
こともあるため、共有関係の雰囲気が変わる可能性はあります。
「共有から自分だけ抜ける」代わりに、
残る人への心理的影響が出る可能性は理解しておくべきです。
Q6. 共有者の一人が海外在住です。売却のたびに帰国してもらう必要はありますか?
A. 場合によっては、
- 現地日本大使館・領事館での署名証明
- 委任状による代理人(日本在住の親族・専門家)への権限委任
などで対応することができます。
頻繁な帰国が難しい場合は、早めに司法書士・弁護士に相談してください。
Q7. 行方不明の共有者の固定資産税まで、自分が払わないといけませんか?
A. 固定資産税の納税義務は、登記上の所有者全員にあります。
実務上は、一人または一部の共有者が立て替えて支払うケースもありますが、
その場合、後から他の共有者に対して負担分の精算請求を行う余地があります。
ただし、現実に回収できるかは別問題なので、
そもそも共有状態をどうするかの見直しが必要です。
Q8. 連絡不能共有者がいる状態で、賃貸だけ始めることはできますか?
A. 賃貸借契約の締結も、本来は共有者全員の同意が必要となるのが原則です。
実務上、一部共有者が賃貸しているケースも見られますが、
後からトラブルになるリスクがあります。
将来的に売却する予定があるなら、
まず共有状態の整理を優先した方が安全です。
Q9. こういう案件は、不動産会社と弁護士どちらに先に相談するのがよいですか?
A.
- 「いくらで売れそうか」「売った場合の手取りはいくらか」
→ 不動産会社 - 「連絡不能共有者に対して、どんな法的手段があり得るか」
→ 弁護士
という役割分担です。
最終的には、不動産会社・弁護士・司法書士が連携して動くケースが多いので、
どちらか一方に相談すれば、もう一方も紹介してもらえることがよくあります。
Q10. まず何から始めればいいですか?
A.
- 登記事項証明書を取得し、「誰がどの持分を持っているか」を正確に把握する
- 共有者ごとの連絡先・関係性・これまでの負担状況(税金・管理)をメモに整理する
- 共有・相続・問題案件に強い不動産会社と、
連絡不能共有者対応に慣れた弁護士のどちらか一方に、現状をそのまま伝えて相談する
ここまでできれば、
- 「話し合いでどこまでいけそうか」
- 「どこから法的手続きが必要になりそうか」
- 「最終的に、自分はどういう落としどころを選ぶべきか」
が、かなり具体的に見えてきます。
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