【結論】既存不適格建築物も売却は可能。ただし「今は適法でも、建て替えや大規模改修に制限がかかる」という前提を理解・説明できないと、価格も取引も不利になりやすい
既存不適格建築物(きそんふてきかく建築物)は、
- 建築当時は法律(建築基準法や条例など)に適合していたが
- その後の法改正や都市計画変更によって
“今の基準ではアウト”になっている建物のことです。
「違法建築」とは違い、
- すぐに是正を求められたり
- 直ちに取り壊しを命じられたり
するものではありません。
“現状のまま使うぶんにはOKだが、建て替えや大規模改修では制限がかかる”
というのがポイントです。
そのため、売却の現場では、
- 法律上は売れるが
- 将来の再建築・増改築の自由度が低くなる可能性がある
- それを理解していないと「聞いていた話と違う」とトラブルにもつながる
という性質を持っています。
以下で、
- 既存不適格建築物とは何か(違法建築との違い)
- なぜ売りにくく・価格が下がりやすいのか
- 再建築・改修時にどんな制限がかかり得るのか
- 実際に売却するときの考え方・説明ポイント
を順番に整理して解説します。
既存不適格建築物とは?「違法建築」とは何が違うのか
既存不適格建築物の定義(ざっくり)
一般的に、次のようなものが「既存不適格」と呼ばれます。
- 建築当時は、その時点の建築基準法や条例に沿って建てられた
- しかし、その後の法改正や用途地域変更、道路指定の見直し等により
現在の基準では適合しない部分が出ている
例:
- 建築当時は容積率200% → 法改正で150%になった
→ 現在の建物は容積率オーバー(床面積が“建て過ぎ”) - 道路斜線・日影規制などが厳しくなり、
→ 同じ高さの建物はもう建てられない - 用途地域の変更で
→ 本来その地域に建てられない種類の建物になっている など
**「昔はOKだったが、今はルールが変わった」**のが既存不適格です。
違法建築との違い
一方、「違法建築」は、
- 建築当時から その時点のルールに反していた建物 のことです。
- 例:建築確認を取らずに増築した/建蔽率・高さをわざとオーバーした など
違法建築は、
- 行政から是正指導・命令の対象になり得る
- 金融機関のローンが付きにくい・ほぼ付かないことも多い
- 原則として「適法状態に戻す」ことが求められる
という意味で、既存不適格とはレベルが違う扱いになります。
※既存不適格と違法建築が「混在」しているケースもあるので、
個別物件では専門家の確認が重要です。
なぜ既存不適格建築物は売りにくく、価格が下がりやすいのか
主な理由は次の3つです。
- 将来の「建て替え・増改築」が今と同じようにはできない可能性
- 「建物の一部を壊したら、元に戻せない」場面があり得る
- 金融機関の融資判断・担保評価が厳しくなりやすい
理由① 将来の「建て替え」が同規模・同条件ではできない可能性
既存不適格建物の多くは、
- 現在の容積率・建ぺい率
- 斜線制限・日影規制
- 用途地域の制限
などに照らすと、**「今のルールでは同じものは建てられない」**状態です。
つまり、
- 建て替えをした場合、
→ 階数を減らす
→ 延床面積を小さくする
→ セットバック(道路から下げる)する
などして、「今より小さい建物」にせざるを得ない可能性があります。
買主からすると、
「今は広い・高い建物に住めるが、
将来建て替えたらコンパクトになってしまうかもしれない」
というリスクになり、資産価値の不安要素になります。
理由② 一部を壊すと「元に戻せない」ケースがある
既存不適格はあくまで「現に存在しているもの」について、
“既得権”的に認められている部分があります。
しかし、
- 増築・大規模改修・建物用途変更などを行う場合は
→ 現行法令を満たす必要が出てくることが多い - 例えば、
- 一部解体 → 新築部分は現行法に合わせなければならない
- 構造に手を入れるレベルの改修 → 最新の耐震基準への適合を求められる場合がある
などです。
結果として、
- 「ちょっと増築・建替えしよう」と思ったら、
→ 全体を大幅に作り替えないと許可が出ない - 「古くなった部分だけ壊そう」としたら、
→ 現行法に合わせて残りもやり替えが必要、と言われる
といったリスクがあり、
改修の自由度が低くなりやすいのがネックです。
理由③ 金融機関の融資判断・担保評価が厳しくなりやすい
住宅ローンや事業用ローンの審査では、
- 建物が現行法に適合しているか
- 再建築時の価値(同規模で建てられるか)
- 将来の市場性
などが、担保評価に影響します。
既存不適格の場合、
- 「同じものは建てられない」
- 「一部壊したら現行法に合わせた大規模改修が必要かもしれない」
といった不確定要素があり、
- 融資自体は通ることも多いが
- 物件評価を控えめにされる
- 借入額が抑えられる/金利・条件が厳しくなる
といった影響が出ることがあります。
→ 買主の資金計画に制約が生じる
= 他の「普通の物件」と比べると選ばれにくい
→ 価格も下がりやすい、という流れです。
既存不適格になりやすいケース例
イメージしやすいよう、よくあるパターンを挙げます。
ケース1:容積率・建ぺい率オーバーのビル・マンション
- 建築当時:容積率 400%
- 現在:都市計画変更で容積率 300%
この場合、
- 既存の建物は容積率400%ぎりぎり(or それ以上)で建っている
- 建て替えの際は、300%までしか建てられない
→ 現行法に合わせると、今より小さい建物になる 可能性が高いです。
ケース2:道路後退(セットバック)が必要な敷地
- 昔は「みなし道路」として認められていた道路が、
再指定で幅員4mを確保するよう求められる - セットバック(敷地の一部を道路部分として提供)すると、
有効宅地面積が減る
→ 建て替え時に建築可能なボリュームが減り、
「今より小さい家/ビル」になる可能性があります。
ケース3:用途地域変更による既存不適格
- もともと準工業地域だった場所が、住居系地域に変更
- 現在建っている工場・店舗兼住宅などが、
新用途地域では新築できない種別
→ 既存の建物は使い続けられるが、
建て替え時には同じ用途では建てられない といった制約が出るケースです。
再建築・改修時に想定される主な制限
物件ごとに違いはありますが、
既存不適格で問題になりやすいポイントは次のようなものです。
- 容積率・建ぺい率の制限
- 建物高さ・斜線制限(日影規制など)
- 用途地域・用途制限
- 接道義務(道路との関係)
- 耐震基準(昭和56年以前の旧耐震など)
1. 容積率・建ぺい率
- 「建ぺい率60%/容積率200%」 → 「建ぺい率50%/容積率150%」に変更 など
- 既存建物が
- 敷地に対する建築面積(建ぺい)
- 延べ床面積(容積)
でオーバーしている場合、
建て替え時には、
- 建築面積(1フロア当たり)を小さくする
- 階数を減らす
などの調整が必要になります。
2. 高さ・斜線制限・日影規制
- 道路斜線・北側斜線・隣地斜線・高度地区などの制限により、
以前より“空に向かって建てられる高さ”が低くなっているケースがあります。 - 一戸建ての2階・3階部分や、マンションの最上階部分が、
現行の斜線制限でははみ出す形になっている、といったこともあります。
3. 用途地域・用途制限
- 工場・店舗・事務所ビルなどで、
地域の用途指定が変わっている場合、
新築・建て替えの際に「同じ用途ではNG」となる可能性があります。
4. 接道義務
- 建築基準法上の道路に「2m以上接する」ことが原則ですが、
道路指定や隅切り(角のカット)などの見直しにより、- 接道部分が事実上狭くなった
- セットバックが必要
といった制限がかかることがあります。
5. 耐震基準(旧耐震かどうか)
既存不適格とは少し概念が違いますが、
- 昭和56年6月以前の建築確認による建物(旧耐震)は
現行の耐震基準を満たしていない可能性が高く、 - 大規模改修・用途変更時には、
耐震補強が求められたり、
補助金・税制との関係も出てきます。
既存不適格+旧耐震が重なると、
「建て替え・改修にまとまったコストがかかる」物件と評価されやすいです。
既存不適格建築物を売却するときの実務的なポイント
- 「どこが」「どのように」既存不適格なのかを把握する
- 建て替え・改修に関する“できること/できないこと”を整理する
- 買主・金融機関に正直に説明できる資料を揃える
- 価格とターゲットを現実的に設定する(実需/投資家/買取)
① 「どこが」「どのように」既存不適格なのかを把握する
- 建築確認済証・検査済証
- 建物図面・配置図
- 法務局の登記簿
- 行政(建築指導課など)での調査記録
などをもとに、
- 容積率・建ぺい率
- 高さ・斜線
- 用途地域
- 接道状況
を、不動産会社・建築士などの専門家と一緒に確認します。
「とにかく既存不適格らしい」ではなく、
「この点が今の基準と違う」というレベルまで特定できると、
買主への説明もしやすくなります。
② 建て替え・改修に関する“できること/できないこと”を整理
- 「同じ規模では建て替えできないが、〇%程度のボリュームなら可能」
- 「高さは今より低くなるが、2階建てまでは問題ない」
- 「用途変更には制限があるが、居住用として使い続ける分には問題ない」
といった形で、
- 完全NGなのか
- 条件付きでOKなのか
を、できる範囲で整理します。
この段階で、
簡易な再建築シミュレーションを建築士に依頼するのも有効です。
③ 買主・金融機関に正直に説明できる資料を揃える
- 既存不適格であることを隠すのはNGです。
- 後から発覚すると、「契約不適合責任」や損害賠償リスクにつながります。
用意しておきたい資料:
- 現行法との相違点を整理したメモ
- 行政・建築士などからの確認結果(可能なら書面)
- 建替え・増築に関する簡易プランや概算(あれば)
リスクを正直に開示しつつ、「どの程度の制限なのか」を具体的に示すことで、
買主も判断しやすくなります。
④ 価格とターゲットを現実的に設定する
- 「普通の物件」と同じ感覚で価格を付けると、
→ 反響が少ない
→ 長期化して結局大幅値下げ
になりがちです。
既存不適格である以上、
- 再建築・改修の自由度が低い
- 将来の追加コストがかかる可能性がある
という事実を踏まえ、
- 相場より一定程度のディスカウントを前提に価格を設定する
- 実需(自分で住む人)だけでなく、
投資家・買取業者もターゲットに含める
ことを検討すると、現実的な出口が見えやすくなります。
専門家コメント
ホームワーク株式会社 代表取締役(既存不適格・築古物件売却担当)
- 既存不適格ビル・マンション・戸建ての売却サポート実績多数
- 建築士・測量士・投資家ネットワークと連携し、再建築・改修シミュレーションも含めて提案
コメント
「『この建物は既存不適格だと言われました。もう売れないのでしょうか?』
というご相談は、特に都心・準都心エリアの築古物件で非常に多いです。
実務的な感覚でお伝えすると、
- 既存不適格で“ある”こと自体よりも、
“どこがどの程度不適格なのかが不明確な状態”で売りに出すことが一番の問題です。
私たちがまず行うのは、
- 行政・建築士などと連携し、
『容積・高さ・用途・接道』のどこに不適合があるのかを整理する - それを前提に、
- 今後も“現状のまま使い続ける用途”で売るのか
- 将来の建替え・再開発のポテンシャル込みで投資家に売るのか
を一緒に検討する
というステップです。
既存不適格=使えない、売れない、ではありません。
**『建て替え・改修の自由度が、他の物件より制限される』**という前提を
きちんと理解し、
- 情報を整理して
- 価格とターゲットを現実的に設定する
ことで、納得度の高い出口は十分に見つかります。」
よくある質問(FAQ)
Q1. 既存不適格建築物でも、本当に売却できますか?
A. 売却自体は可能です。
ただし、再建築・改修の制限や、将来の追加コストリスクを織り込んで
価格が調整されるのが一般的です。
違法建築とは扱いが異なる点に注意が必要です。
Q2. 既存不適格であることを買主に伝えないとどうなりますか?
A. 後から発覚した場合、
- 契約不適合責任に基づく損害賠償請求
- 最悪の場合、契約解除
といった重大なトラブルにつながる可能性があります。
知っている範囲は必ず告知すべきです。
Q3. 既存不適格だと住宅ローンは使えませんか?
A. 物件や金融機関によりますが、
「既存不適格=一律NG」というわけではありません。
- 現在の安全性(構造・耐震)
- 将来の担保価値
などを総合的に見て判断されます。
不動産会社経由で、利用可能な金融機関を確認しておくと安心です。
Q4. 建て替え時に必ず今より小さくなるのでしょうか?
A. 必ずではありません。
- 一部は既存より大きくできる場合もあれば
- 全体としてはコンパクトにせざるを得ない場合もあります。
具体的には、敷地条件・用途地域・各種制限を踏まえ、
建築士に簡易シミュレーションを依頼するのが確実です。
Q5. 旧耐震(昭和56年以前)のマンションは、全部既存不適格ですか?
A. 旧耐震=既存不適格、というわけではありません。
耐震基準は法改正で強化されていますが、
「旧耐震だから直ちに違法」という扱いではなく、
用途・規模・工事内容によって求められる対応が変わります。
既存不適格かどうかは、別途法令との関係を確認する必要があります。
Q6. 投資家に売る方が有利なケースはありますか?
A. はい。
- 現在の収益性が高い
- しかし再建築ではボリュームが小さくなる
- 建物寿命までの“残期間”を前提に投資判断できる
といった場合は、投資家の方が評価しやすいことがあります。
賃料・利回り・出口戦略を整理して提示することが重要です。
Q7. 不動産会社の買取だと、どれくらい安くなりますか?
A. 一般論として、
エンド向け仲介価格の6〜8割程度が買取価格のレンジとされます。
既存不適格の程度・立地・収益性などによって上下しますので、
複数社から買取査定を取って比較することをおすすめします。
Q8. まず何から始めればいいですか?
A.
- 建築確認済証・図面・登記簿など、建物関係の書類を整理する
- 既存不適格と言われた“根拠”や“指摘内容”を、できる範囲でまとめる
- その資料を持って、既存不適格・築古物件に強い不動産会社や建築士に相談する
という流れがおすすめです。
いきなり結論(売る/売らない)を出そうとせず、
“どこが・どの程度不適格なのか”の見える化から始めると、
選択肢がぐっと整理されます。
千代田区で不動産売却をご検討の方へ
不動産売却は、
流れを理解したうえで進めることで
不安と失敗を大きく減らせます。
ホームワークでは、
千代田区の不動産売却について、
準備段階から引き渡しまで
一貫してサポートしています。
【お問い合わせ窓口】
ホームワーク株式会社
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