アスベストを含む建物は売れる?告知義務と取引時の注意点

ハンコと書類

【結論】アスベスト含有建物も売却は可能。ただし「告知」と「調査範囲」と「契約内容」を曖昧にするとトラブルリスクが非常に高い

アスベスト(石綿)を含む可能性がある建物でも、

  • 法律上「売却禁止」になっているわけではなく、売却自体は可能です。
  • しかし、
    • アスベストを知りながら隠して売る
    • 調査していないのに「大丈夫」と説明する
    • 解体・改修時の費用・リスクを考慮せずに契約する

といった対応をすると、損害賠償や契約解除などの大きなトラブルになり得ます。

現実的には、

  • どこまでアスベスト調査をするか
  • 何を「知っている事実」として告知するか
  • 将来の解体・改修リスクや費用負担をどう契約で分担するか

を整理できれば、価格調整は必要でも、
安全に売買を成立させることは十分に可能です。

以下で、

  • アスベストと建物売買の基本知識
  • 売主・買主それぞれの告知義務・注意点
  • 実際の取引でよく使われるリスクの扱い方
  • トラブルを避けるための現実的な進め方

を解説します。


目次

アスベストを含む建物は「売ってはいけない」のか?

売却そのものは法律で禁止されていない

アスベストは、
吸入により健康被害を引き起こすリスクがあるため、

  • 製造・使用
  • 解体・改修工事

には厳しい規制がありますが、

「アスベストを含む建物を、所有者同士で売買してはならない」

というルールがあるわけではありません。

したがって、

  • アスベスト含有が確定している建物
  • アスベスト含有の可能性が高い昭和築の建物

であっても、適切な情報開示と契約条件の調整を行えば売却は可能です。

問題は「隠して売ること」「調査していないのに“安全”と言うこと」

トラブルの多くは、

  • アスベストがある(あった)ことを知っていたのに、告知しなかった
  • 調査していないにもかかわらず、「アスベストはありません」と断言した
  • 解体・改修時にアスベスト処理費用が大きくかかることを、買主に説明しなかった

といった「情報の非対称性」から生じます。

不動産取引では、

売主は知っている重要な事実を隠してはならない(告知義務)

という考え方があり、
アスベストの有無・調査状況・疑いの有無は、
**取引に大きな影響を与える“重要事項”**と考えるべきです。


アスベストと建物売買の基礎知識

どんな建物でアスベストリスクが高いか

一般的には、次のような建物でアスベスト含有の可能性が高いとされています。

  • 昭和30〜50年代(1955〜1980年頃)に建てられた建物
    • ビル・マンション・学校・病院・工場など大規模建物
  • 吹付け材が使われている天井・梁・機械室・ボイラー室など
  • スレート屋根・サイディング・ビニル床タイル・断熱材などの一部建材

現在は新規使用が禁止されていますが、
既存建物にはなお多く残っているのが現状です。

「含まれているだけ」で直ちに危険とは限らない

アスベストは、

  • 固定された状態(飛散しない状態)で通常利用する限りは、
    直ちに重大な健康被害が出るわけではありません。
  • 問題となるのは、解体・改修工事などでアスベストが飛散した場合です。

したがって、

  • 通常利用中の売買=即危険、という話ではなく
  • 「将来解体・改修するときのコストと安全管理」が大きなテーマになります。

売主に求められる「告知義務」とその範囲

売主が告知すべき主な内容

売主は、少なくとも次のような点について、
知っている範囲を正直に伝える必要があります。

  • 過去にアスベスト含有建材が使われていると聞いた/報告を受けた
  • アスベスト調査報告書を持っている(有/無・結果の内容)
  • 一部の箇所でアスベスト撤去工事を行った履歴がある
  • 行政や管理組合からアスベストに関する通知を受けたことがある

逆に言えば、

  • 本当に何も知らず、調査もしていない場合は、
    「分からない」という事実自体を説明することが重要です。

「アスベストなし」と断定しないことが重要

  • 調査もしていないのに「アスベストはありません」と断定
  • 曖昧な記憶だけで「昔に全部撤去したはず」と説明

といった対応は、後に

  • 「説明と違った」として契約不適合責任・損害賠償の対象

になる可能性があります。

実務では、

  • 「売主はアスベスト含有の有無について専門的調査を行っておらず、不明である」
  • 「過去の資料・管理組合からの情報などから、以下の点までは把握している」

といった形で、分かっている範囲と分からない範囲を切り分けて説明することが重要です。


買主側が知っておくべき注意点

① 将来の解体・改修コストに大きく影響する

アスベスト含有建物を将来解体・大規模改修する場合、

  • アスベスト調査費用
  • 飛散防止の養生費用
  • 特別な防護具・設備を用いた工事費
  • アスベスト廃棄に関わる処分費

などが必要で、通常の解体よりも高額になることが一般的です。

買主側としては、

  • 将来、建て替えや大規模改修を予定しているなら、
    事前に「アスベスト前提の解体費概算」を知っておく必要があります。
  • 表面的な「今の建物価格」だけで判断すると、
    結果的に想定外の負担を抱えるリスクがあります。

② 「調査済みか/未調査か」でリスクの質が変わる

  • 調査済みで、「どこに・どのレベルで・どれくらいアスベストがあるか」が
    分かっている物件
    → リスクはあるが、見えているぶん対処しやすい
  • 未調査で、「あるかどうか分からない」物件
    → 価格は安めでも、後から大きなリスクが出る可能性

どちらが良いかは、買主の用途・リスク許容度によりますが、
最低限、

「調査済みなのか/未調査なのか」
「調査済みなら、その結果を入手できるのか」

は必ず確認するべきポイントです。


実務でよくある「アスベストリスク」の扱い方

パターン① 売主が事前調査を実施し、結果を開示したうえで売却

  • 売主がアスベスト調査を実施し、
    その報告書を買主に渡したうえで売却するパターン。
  • 買主は、「どこに・どの程度のアスベストがあるか」を理解した上で購入。

【メリット】

  • 双方の認識が揃いやすく、後のトラブルになりにくい
  • 価格交渉・将来コストの見積りがしやすい

【デメリット】

  • 売主側に調査費用の負担が発生
  • 問題箇所が多いと、価格交渉で不利になる可能性

パターン② 現況有姿(未調査)のまま、リスクを織り込んで安く売る

  • 売主は追加のアスベスト調査を行わず、
    「現況有姿」「アスベストの有無は不明」という前提で売却。
  • その分、価格をディスカウントし、
    将来の調査・対応は買主側のリスクとする。

【メリット】

  • 売主は調査費用をかけずに、比較的早く売却できる
  • 買主はリスクを承知のうえで、安く取得できる可能性

【デメリット】

  • 後から予想以上のアスベストが見つかるリスク
  • 「売主は本当に何も知らなかったのか」が問題になる余地

パターン③ 売主・買主で将来のアスベスト対応費用を“分担”する条項を入れる

  • 売却後にアスベストが見つかった場合、
    • 一定額までは買主負担
    • 一定額を超えた部分は売主が負担(または一部補填)

といった条項を入れて、リスクをシェアする方法です。

【メリット】

  • 双方がある程度納得しやすく、価格も中庸になりやすい

【デメリット】

  • 将来の事象をめぐり、どこまでが対象かの解釈トラブルが生じる余地
    → 条文設計に弁護士レベルの専門性が必要

売却時・購入時の「現実的な進め方」(チェックリスト)

売主側チェックリスト

  • [ ] 建物の竣工年を把握しているか
  • [ ] 過去のアスベスト調査結果・報告書を持っているか
  • [ ] 管理組合・ビル管理会社からのアスベスト通知がないか
  • [ ] 一部撤去・改修の履歴があれば、その範囲・時期・業者名を把握しているか
  • [ ] 「知っていること」と「分からないこと」を整理したか
  • [ ] 不動産会社・弁護士と、告知内容・契約条文案を検討したか

買主側チェックリスト

  • [ ] 建物の竣工年と、アスベスト使用が一般的だった時代かどうかを確認したか
  • [ ] 売主が持っている調査報告書を入手・確認したか
  • [ ] 未調査部分がどこか(天井裏・機械室など)を把握したか
  • [ ] 将来の解体・大規模改修計画がある場合、その費用にアスベスト対応を織り込んだか
  • [ ] 金融機関がアスベストリスクをどう評価するか(融資に影響がないか)確認したか
  • [ ] 必要なら、自分側でも追加調査(セカンドオピニオン)を検討したか

専門家コメント

ホームワーク株式会社 代表取締役(事業用・中古不動産取引担当)

  • 築古ビル・マンション・工場など、アスベストリスクを含む物件の売買実績多数
  • 売主・買主双方に立ったリスク説明と契約設計をサポート

コメント

「アスベストが絡むと、『売れないのでは』『買うのは危ないのでは』という
極端なイメージを持たれる方が多いですが、
実務では冷静にリスクを整理すれば、売買自体は十分に可能です。

ポイントは、

  • 売主が“知っていること”をきちんと開示すること
  • 調査済みか未調査かを明確に伝えること
  • 将来の解体・改修コストや安全管理を、価格・契約条件に織り込むこと

の3つです。

逆に、
何も調査せず、何も説明せずに売買してしまうと、
後から大きなトラブルになるリスクが高くなります。

『アスベストがあるかどうか分からないが、古いビルなので不安だ』
『売る前にどこまで調査すべきか分からない』
といった段階からでも構いません。

物件の図面・築年・過去の工事履歴などを一緒に整理しながら、
“どのレベルのリスクなのか”“どこまで対策するべきか”を
段階的に検討していくことが大切だと考えています。」


よくある質問(FAQ)

Q1. アスベストを含む建物は、法律的に売却しても問題ないのでしょうか?
A. 売却自体は禁止されていません。
ただし、アスベストの有無や調査状況を隠して売ると、
契約不適合責任や損害賠償の問題につながる可能性があります。
適切な告知と契約内容の整理が不可欠です。

Q2. アスベストがあることを知っているのに、告知しなかった場合どうなりますか?
A. 発覚した際に、

  • 補修・撤去費用の請求
  • 損害賠償請求
  • 場合によっては契約解除
    などのリスクがあります。
    “知っていたのに黙っていた”ことは特に問題視されます。

Q3. 売主として、アスベスト調査は必ずやらないといけませんか?
A. 法律上「必ず実施しなければならない」とまでは言い切れませんが、
築年数・用途・規模によっては、調査を行うことが
安全・円滑な取引のためにほぼ必須と言えるケースも多いです。
未調査なら、その事実を含めて説明することが重要です。

Q4. アスベスト調査の結果が悪かったら、売却できなくなりますか?
A. 「売却できない」ということは通常ありませんが、

  • 価格が下がる
  • 買主が限定される(投資家・プロ向けが中心になる)
  • 解体・改修時のコスト見込みがシビアに検討される
    といった影響は出ます。
    一方で、リスクが“見える化”されることで、
    むしろ取引しやすくなる面もあります。

Q5. アスベストを含む建物を買うのはやめた方がいいですか?
A. 一概に「やめるべき」とは言えません。
用途・価格・将来の計画によっては、
リスクを織り込んだ上で十分に合理的な投資・購入になり得ます。
大事なのは、

  • 調査結果
  • 将来の解体・改修計画
  • コスト見込み
    を踏まえて判断することです。

Q6. 解体時のアスベスト処理費用は、譲渡所得税の計算で控除できますか?
A. 一般には、
売却のために直接必要となった解体・処理費用は、
譲渡費用として譲渡所得から控除できる可能性があります。
ただし、具体的な扱いは状況によるため、
税理士に個別相談することをおすすめします。

Q7. 住宅ローンの審査に、アスベストリスクは影響しますか?
A. 金融機関によって対応は異なりますが、
将来的に建替え・改修が必要な古い建物については、
アスベストリスクも含めて慎重に評価される傾向があります。
気になる場合は、事前に金融機関や仲介会社に確認しましょう。

Q8. 管理組合からアスベストに関する通知が来ていました。これも告知が必要ですか?
A. はい。
管理組合からの調査結果や注意喚起の文書は、
買主にとって重要な情報です。
写しを用意し、きちんと開示することをおすすめします。

Q9. 自分が所有してからアスベスト撤去工事をした箇所があります。これも伝えるべきですか?
A. 伝えるべきです。
どの部分を、いつ、どのような工事で撤去したかは、
建物の安全性・将来の工事計画に関わる重要な情報です。

Q10. 何から相談していいか分からないのですが、その段階でも相談して大丈夫ですか?
A. まったく問題ありません。

  • 建物の築年
  • 用途(住宅・事務所・工場など)
  • 過去の工事履歴や、手元にある図面・報告書

といった、分かる範囲の情報だけでも共有いただければ、

  • アスベストリスクのおおよそのレベル感
  • 調査の要否・優先順位
  • 売却時に想定される注意点

などの方向性を一緒に整理していくことができます。

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