旧耐震の建物は危険?売却・保有判断の考え方

地震

【結論】「すぐ危険だから手放すべき」ではなく、“耐震性の現状+コスト+ライフプラン”で冷静に判断するべき

旧耐震(一般に1981年5月31日以前に建築確認を受けた建物)は、

  • 新耐震より地震リスクが高い可能性があるのは事実
  • しかし「全部危険」「必ず倒壊する」というわけではない
  • 耐震診断・補強・建替え・売却など、取り得る選択肢は複数ある

というのが現実です。

ポイントは、

  1. その建物が本当に危険な状態かどうか(耐震診断の有無・結果)
  2. 補強・建替えにいくらかかりそうか
  3. 自分(家族)の今後10〜20年のライフプランと合っているか
  4. 売却するなら、旧耐震をどう開示・評価・戦略に組み込むか

を整理したうえで、
「保有継続」「耐震補強」「建替え」「売却」を比較検討することです。


目次

旧耐震基準とは?まず押さえるべき前提

旧耐震と新耐震の境目

一般に、

  • 旧耐震:1981年(昭和56年)5月31日以前に建築確認を受けた建物
  • 新耐震:同年6月1日以降に建築確認を受けた建物

とされています。

新耐震基準では、

  • 「震度5強程度の中規模地震」ではほぼ損傷しない
  • 「震度6強〜7程度の大規模地震」でも倒壊・崩壊を免れる

ことを目標とした設計が求められています。

旧耐震は、
この「大規模地震に対する粘り強さ」という観点が
今ほど重視されていなかった時代の基準です。

「旧耐震=全て危険」ではない理由

  • もともと構造的に余裕を持って設計・施工された建物もある
  • 途中で耐震補強や大規模改修を実施しているケースもある
  • 地盤条件や建物形状によって、実際の耐震性能に差がある

一方で、

  • 施工不良
  • 老朽化(腐朽・鉄筋腐食)
  • 増改築の影響

などにより、設計どおりの性能が維持されていない可能性もあります。

つまり、
「旧耐震かどうか」だけで安全・危険を断定するのは不正確であり、
個別の状態をきちんと確認することが不可欠です。


旧耐震の建物が抱える主なリスク

旧耐震の建物を「保有し続ける/人に貸す/売る」場合、
主に次の3つのリスクを意識しておく必要があります。

リスク① 地震による倒壊・損傷リスク

  • 新耐震よりも「大地震時の倒壊リスク」が高いとされる
  • 特に
    • 1階がピロティ(駐車場など)で開放的
    • 壁が少なく開口部が多い
    • 変形しやすい形状(L字型・コの字型)
      などは要注意と言われることが多い
  • 経年劣化(コンクリートの中性化・鉄筋腐食・木材の腐朽など)も加わると、
    構造耐力がさらに低下している可能性も

リスク② 資産価値・流動性の低下

  • マンションの場合、旧耐震というだけで
    • ローンが付きにくい
    • 投資家が敬遠しやすい
    • 修繕・建替え合意が難航しがち
  • 一戸建ての場合でも、
    • 「建物価値ゼロ+土地値評価」が基本になりやすい
    • 再建築不可・セットバック必要などの要素があるとさらに売りにくい

→ 将来の売却を考えるとき、
買い手が付きにくい/思ったよりも安くなるリスクを
あらかじめ織り込む必要があります。

リスク③ 貸す場合の「オーナー責任」・レピュテーション

  • 大きな地震で被害が出た場合、オーナーとして
    「どこまで安全配慮義務を尽くしていたか」が問われる可能性
  • テナント・入居者募集の際、
    「旧耐震であることの説明」をどう行うかという問題
  • 行政による耐震化の指導・勧告が強まる可能性

→ 賃貸経営を続けるなら、
耐震診断・補強の検討や情報開示の方針が重要になります。


「保有 or 売却」を判断するための4つの視点

旧耐震の建物を前にしたとき、
次の4つの視点で整理すると判断しやすくなります。

  1. 耐震性の現状(診断の有無・結果)
  2. 補強・建替えのコストと実現性
  3. 自分・家族のライフプラン
  4. 市場性・出口戦略(売るとしたらどうか)

① 耐震性の現状を“事実ベース”で把握しているか

まず、

  • 耐震診断をしたことがあるか
  • その結果(Is値など)を把握しているか
  • 補強提案を受けたことがあるか

を確認します。

【ここが重要】

  • 「旧耐震だから不安」という感覚の問題と、
  • 「診断結果として危険水準かどうか」という事実の問題

は分けて考える必要があります。

診断結果が

  • 基準を大きく下回る → 補強・建替え・売却を早期検討
  • ギリギリ基準近く → 補強で対応できる余地も
  • 十分な安全性が確認できる → 「旧耐震=危険」のイメージとの差を整理

といったように、
現状が分かれば“次の一手”が見えやすくなります。

② 補強・建替えのコストと実現性

  • 木造2階建一戸建ての耐震補強:
    数十万〜200万円台程度が一般的なレンジ(内容・地域による)
  • RC造中規模マンションの補強:
    数千万円〜数億円単位(1戸あたり数百万円規模)になることも

【チェックポイント】

  • 自分の建物規模・構造だと、おおよそどのくらいかかりそうか
  • 行政の補助金制度が利用できるか
  • マンションの場合、管理組合として合意形成できる現実性があるか

戸建なら「自分の判断だけ」で済みますが、
マンション・共同住宅は他の区分所有者・借主との合意形成がボトルネックになりがちです。

③ 自分・家族のライフプランとの整合性

  • あと何年ここに住むつもりか
  • 将来的に子どもに相続させるのか、どこかのタイミングで手放すのか
  • 住み替えの予定(タイミング・予算)

を具体的に描くことで、

  • 「あと10年だけ住めればいい → 最低限の補強+その後売却」
  • 「長くここを拠点にしたい → しっかり補強 or 建替え前提で考える」
  • 「家族は引き継ぎたくない → 早めの売却も選択肢」

など、方向性が見えてきます。

④ 市場性・出口戦略(売却するとしたらどうか)

  • 土地としての価値(立地・形・接道条件)
  • 再建築の可否
  • 周辺の再開発動向

によって、

  • 「建物価値ゼロ+土地値」としても十分ニーズがある
  • 旧耐震だが、投資用として需要が残る(高利回りで売れる)
  • 再建築不可など、整理にかなり時間と工夫が必要

といった違いが出ます。

不動産会社に

  • 「現状のまま売るとどのくらい」
  • 「解体して更地にするとどのくらい」
  • 「補強・リノベ後ならどのくらい」

という3パターンを試算してもらうと、
保有 or 売却判断がしやすくなります。


旧耐震の建物を「保有し続ける」場合の考え方

1. 最低限やっておきたいこと

  • 耐震診断の検討(特に地震リスクの高いエリア)
  • 老朽化が進んでいる箇所(屋根・外壁・基礎・配管など)のチェック
  • 火災保険・地震保険の内容確認(補償範囲・保険金額)

「築年数+旧耐震」だけでなく、
日常のメンテナンス状態でリスクは大きく変わります。

2. 自宅として住み続ける場合

  • 家族の安全性をどう確保するか
  • 「大地震時に致命的な被害を受けにくくする」レベルの補強を優先するか
  • いざというときの避難・連絡体制

などを含め、防災計画とセットで考えることが大切です。

3. 賃貸として貸し続ける場合

  • 耐震診断結果をどう扱うか(入居者への説明・告知)
  • 大規模地震で被害が出た場合のオーナー責任リスク
  • 将来的な耐震化・建替えを見越した賃貸戦略(短期契約・定期借家など)

賃貸経営を続けるなら、
収益性だけでなく、安全性とリスク説明もセットで検討すべきフェーズに来ています。


旧耐震の建物を「売却する」場合のポイント

ポイント① 「旧耐震であること」は必ず開示する

  • 建築年月・確認済証の時期から、旧耐震かどうかは基本的に判断できます。
  • 旧耐震を隠して売却することは、後のトラブル(説明義務違反)につながるリスクが高いです。

売却時には、

  • 「旧耐震であること」
  • 「耐震診断の有無・結果」
  • 「補強の履歴」

を、正直に・整理して開示した方が、
結果として取引がスムーズになりやすいです。

ポイント② 「建物として売るか」「土地(古家付き)として売るか」

  • 戸建ての場合:
    • 建物の居住性・見た目・メンテ状況が良ければ、
      「中古戸建」として買主がつくこともあります。
    • 一方で、「解体前提で買いたい」というニーズもあるため、
      両方のシナリオを不動産会社と検討する価値があります。
  • マンションの場合:
    • 旧耐震マンションはローン付与が厳しいケースもあり、
      「現金買主・投資家中心」の市場になりがちです。

ポイント③ 解体して更地にするかの検討

  • 解体費用(木造戸建てで数十万〜100数十万円、RC造・大規模だと数百万円〜)と、
  • 更地にした場合の売却価格アップ分

を比較し、

  • 「解体してから売る方がトータルで得か」
  • 「解体費用込みの値引き前提で、そのまま売る方が楽か」

を検討します。

なお、解体費用は譲渡所得の計算上、取得費 or 譲渡費用として扱える場合が多いため、
税理士に確認しながら判断するのが安心です。

ポイント④ 買主のタイプを意識した売却戦略

  • 自宅取得希望者
    → 耐震診断や補強提案があると安心材料になる
  • 投資家・事業者
    → 解体・建替え・リノベ前提のため、「土地・ボリューム・利回り」を重視
  • 買取業者
    → 旧耐震のリスクとコストを織り込んだうえで、スピード重視の買取

どの層をターゲットにするかで、

  • 広告の出し方
  • 価格設定
  • 交渉のポイント

が変わってきます。


専門家コメント

ホームワーク株式会社 代表取締役(不動産売却・資産整理担当)

  • 築古・旧耐震マンション・戸建の売却相談を多数対応
  • 相続・住み替え・資産入れ替えなど長期視点での提案が得意

コメント

「旧耐震の建物については、

  • 『危ないから早く手放した方がいい』
  • 『古いけれど、まだ使えるから放っておいても大丈夫』

と、極端な考え方になりがちな印象があります。

実務の現場感覚としてお伝えしたいのは、

“旧耐震”というラベルだけで判断せず、
1件ごとの現状と持ち主の状況を丁寧に見ていくことが大事

ということです。

  • 耐震診断の有無・結果
  • 補強や建替えにかかるコスト
  • ご家族のライフプラン
  • 売却した場合の手取り見込み

を一度“数字”で並べてみると、
『保有した方が良いのか』『売却した方が良いのか』の答えが
ずっと見えやすくなります。

『旧耐震と聞くと何となく不安だけど、どう考えたらいいか分からない』
という段階でも構いませんので、
まずは現状整理と選択肢の洗い出しから、一緒に進めていければと思います。」


よくある質問(FAQ)

Q1. 旧耐震の建物は、必ず危険なのでしょうか?
A. 「必ず危険」「必ず倒壊する」というわけではありません。
ただし、新耐震と比べて大地震時のリスクが高い可能性があるのは事実です。
実際の危険度は、構造・地盤・劣化状況・補強の有無などで大きく変わります。

Q2. 旧耐震かどうかは、どこを見れば分かりますか?
A. 一般的には、「建築確認日」(確認済証の日付)を基準にします。
1981年(昭和56年)5月31日以前の確認であれば旧耐震とされることが多いです。
登記簿の「新築年月日」だけでは判断できない場合もあるため、
設計図書や確認済証を確認するのが確実です。

Q3. 旧耐震だと住宅ローンが組めないのですか?
A. 銀行によって対応は異なりますが、
旧耐震マンションなどはローン審査が厳しくなる傾向があります。
一方、戸建てや土地としての評価が高い場合などは、
ローンが付くケースもあります。事前に金融機関や不動産会社に確認が必要です。

Q4. 耐震診断や補強は必ずしなければいけませんか?
A. 法律上「必ず」という場面は限られますが、
自宅として住み続ける・賃貸として貸し続けるのであれば、
検討する価値は高いです。自治体によっては診断・補強に補助金が出る場合もあります。

Q5. 解体して更地にしてから売る方が得ですか?
A. 物件によります。

  • 解体費用
  • 更地にしたことで上がる売却価格
  • 譲渡所得税への影響(解体費を取得費等に算入できるか)
    を踏まえて試算する必要があります。
    不動産会社と税理士の両方に相談して判断するのが安全です。

Q6. 旧耐震マンションを相続しました。売るか持つか迷っています。
A.

  • 管理状況・修繕積立金の状況
  • 耐震診断・建替え検討の有無
  • 収益性(賃貸に出した場合)
  • ご自身のライフプラン
    などを踏まえたうえで判断することになります。
    「今売った場合」「賃貸に出して数年後に売る場合」など、
    複数パターンのシミュレーションを出してもらうと検討しやすくなります。

Q7. 旧耐震の建物を貸していて、大地震で被害が出たらオーナーの責任になりますか?
A. 個別事情によります。

  • 耐震診断・補強を全く検討していなかった
  • 明らかに危険な状態を放置していた
    などの場合、責任を問われる可能性がゼロとは言えません。
    安全配慮義務をどこまで尽くしていたかが重要になります。

Q8. 耐震診断で「危険」と出たら、すぐ売却すべきですか?
A. すぐに、とは限りません。

  • 補強・建替えのコストと実現性
  • 自分や家族の今後の住まい方
  • 売却した場合の手取り額
    を比較しながら判断すべきです。
    診断結果を正直に開示して売却することも可能ですが、
    その分価格には反映されます。

Q9. 旧耐震の建物をリノベーションしたら、耐震性も新しくなりますか?
A. 内装中心のリノベーション(デザイン・設備交換など)だけでは、
基本的に耐震性は変わりません。
構造に手を入れる「耐震補強」を行わない限り、
耐震性能は旧耐震のままという認識が必要です。

Q10. まず何から始めればいいですか?
A.

  1. 建物の築年・建築確認時期を確認する
  2. 耐震診断の有無・結果を確認(なければ実施を検討)
  3. 不動産会社に「売却するとしたら」の相場を聞く
  4. 必要に応じて、建築士・税理士にも相談

というステップがおすすめです。
「まだ売却を決めていない」という段階でも、
情報を集めるだけで判断材料が大きく増えます。

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