【結論】成年後見人が関わる不動産売却は「普通の売却+家庭裁判所のチェック」が必須。準備と段取りさえ押さえれば、時間はかかっても安全に売却できる
所有者が認知症・知的障害・精神障害などにより
自分で契約の判断ができない場合、不動産を売るには
- 成年後見人(保佐人・補助人を含む)の選任
- 家庭裁判所の許可
という「通常の売却にはないステップ」が必ず必要になります。
この手続きを知らないまま動いてしまうと、
- 本人にサインをしてもらっても「法律的に無効」になり得る
- 買主が見つかってから、後見手続きで数ヶ月足止め
- 家庭裁判所に許可されず、契約が白紙に戻る
といったトラブルに直結します。
一方で、
- いつ・誰が後見人になるか
- 売却が本当に「本人の利益」になるか
- 裁判所にどう説明・資料提出するか
を事前に整理しておけば、
- 時間はかかる(目安:3〜6ヶ月)が
- 法的に安全で、後から争いにくい売却
を実現することは十分可能です。
以下で、成年後見人が関わる不動産売却の
- 基本ルール
- 流れ(時系列)
- 実務でつまずきやすいポイント
- 対処法と準備しておきたいこと
を、ホームワーク株式会社の実務感覚も交えて解説します。
そもそも「成年後見」が必要になる不動産とは?
判断能力が不十分な所有者の不動産は、本人だけでは売れない
次のようなケースでは、
原則として「本人単独」で売却の契約をすることはできません。
- アルツハイマー型認知症などで、契約内容を理解できない
- 知的障害や精神障害があり、財産管理が困難
- 脳梗塞・事故の後遺症などで判断能力に大きな影響が出ている
この場合、
- 成年後見人(保佐人・補助人)が「代理人」として契約し、
- さらに家庭裁判所の許可を受けることで、
はじめて有効に不動産を売却できる、という仕組みです。
成年後見制度のざっくり整理(3タイプ)
家庭裁判所が選任する「法定後見」には、主に3つの類型があります。
- 後見
- 判断能力がほとんどない
- 原則として、後見人がほぼ全ての法律行為を代理
- 保佐
- 判断能力が著しく不十分
- 一定の重要な行為について、保佐人の同意・代理が必要
- 補助
- 判断能力が不十分な場面がある
- 対象行為を限定して、補助人がサポート
不動産売却は「重要な財産行為」にあたるため、
いずれの類型でも、本人単独ではなく後見人側の関与が必須と考えておくべきです。
成年後見人が関わる不動産売却の「全体の流れ」
成年後見人を使った売却は、
通常の売却フローに「後見人選任」と「家庭裁判所の許可」が挟み込まれたイメージです。
- 本人の状況確認・方針整理
- 成年後見人(保佐人・補助人)の申立て
- 後見人選任後、売却の準備・査定
- 買主候補の決定・売買条件の仮決め
- 家庭裁判所に「売却許可」の申立て
- 許可が出たら、正式に売買契約・決済・引き渡し
それぞれのステップで「どこに時間がかかるか」を分かっているだけでも、
全体の見通しが立ちやすくなります。
ステップ① 本人の状況確認と「本当に売るべきか」の整理
まずは「本人の利益」を基準に考える
成年後見人が関わる売却では、
- 相続人の都合(相続税・分けやすさ)
- 家族の都合(管理が大変・空き家が心配)
だけでなく、
- 本人(被後見人)にとっての利益
が最優先されます。
家庭裁判所もここを非常に重視します。
例えば:
- 売却代金を介護費・医療費・施設入居費に充てる必要がある
- 誰も住まない家を維持することで、本人の財産が減り続けている
- 老朽化した家に一人で住み続けるより、施設入居のほうが安全
といった「本人の生活・安全・財産保全」にとって
売却が合理的かどうか、を整理しておくことが重要です。
家族内での事前合意も大事
後見制度は「本人のため」の制度ですが、
現実には
- 兄弟姉妹・配偶者・子ども・孫…
など、複数の利害関係者がいることがほとんどです。
後から
- 「勝手に売ってしまった」
- 「もっと高く売れたはずだ」
- 「あの子だけが得をしている」
といった不満を減らすためにも、
- 売却の必要性
- 残債の有無
- ざっくりした相場価格
- 今後の生活費の見通し
などを、早い段階で家族内で共有しておくとスムーズです。
ステップ② 成年後見人の申立て(ここが最初のハードル)
誰が申立人・後見人になるのか
家庭裁判所に申立てをできるのは、主に次のような人です。
- 本人(難しいケースも多い)
- 配偶者
- 4親等内の親族(子、父母、兄弟姉妹、孫、おじ・おば等)
- 市区町村長 など
「誰を後見人候補にするか」も大きな論点です。
- 家族の誰か(長男・長女など)が希望するのか
- 家族には適任者がいないので、弁護士・司法書士・社会福祉士など専門職後見人に任せるか
家庭裁判所が最終的に決めるため、
希望どおりになるとは限りませんが、
申立て時に「候補者」として希望を出すことは可能です。
申立てから選任までの期間の目安
家庭裁判所の混み具合や事案の複雑さにもよりますが、
- 書類準備〜申立て:数週間〜1ヶ月程度
- 申立て〜審問・医師の鑑定など:1〜2ヶ月程度
- 審理〜選任決定:さらに1ヶ月前後
といったイメージで、
トータルで3〜6ヶ月程度かかることも珍しくありません。
売却を急ぎたい事情(施設入居のタイミング・ローン返済等)がある場合でも、
ここは「どうしても時間が必要な工程」と理解しておく必要があります。
ステップ③ 後見人選任後の売却準備(査定・方針決め)
後見人の「権限の範囲」を確認
選任された後見人(保佐人・補助人)の種類によって、
- 本人の「代理権」
- 一部の行為への「同意権」
などの範囲が異なります。
不動産の売却についても、
- 後見人が代理して契約できるのか
- 補助・保佐の場合、本人の同意も形式上必要か
などを、
家庭裁判所の審判書・登記事項証明書(後見登記)で確認します。
不動産会社への査定依頼〜売却方針の素案づくり
ここからは、通常の売却準備に近い流れです。
- 現地調査・査定
- 物件の権利関係の確認(抵当権・共有者の有無)
- 相場価格・売却の想定スケジュール
- リフォームの要否(そのまま売るか・一部手入れするか)
などを、不動産会社と一緒に整理します。
ホームワーク株式会社では、
- 売却価格帯のシミュレーション
- 売却と賃貸、売却と買取など複数案の比較
- 売却代金の使途(介護費用・施設入居費など)の見込み
まで含めて、
後見人・親族が「家庭裁判所に説明しやすい資料」の形でまとめるようにしています。
ステップ④ 買主候補の決定・条件の仮決め
家庭裁判所は「具体的な売却条件」を見て判断する
後見人が「売却許可」を家庭裁判所に申立てる際には、
- 買主候補(名前・住所)
- 売買代金の額
- 売買契約書の案
- 査定書(相場と比較して不当に安くないか)
- 売却の必要性・理由(本人の生活・介護状況など)
といった「具体的な条件」を示す必要があります。
そのため、
- まずは後見人の権限内で、買主候補と条件交渉をし、
- 「裁判所の許可が出たら、この条件で契約する」という合意(予約・覚書レベル)をまとめる
という流れが一般的です。
不動産会社・買主にも「後見・裁判所の流れ」を共有
- 通常の売却より時間がかかること
- 家庭裁判所の判断次第で、条件変更や不許可の可能性もあること
を、買主側にもきちんと説明しておくことが重要です。
ここを曖昧にすると、
- 「こんなに時間がかかるとは思わなかった」
- 「他の物件に決める」とキャンセルされる
といったトラブルになりやすくなります。
ステップ⑤ 家庭裁判所への「不動産売却許可」の申立て
裁判所がチェックする主なポイント
家庭裁判所は、主に次のような観点から許可・不許可を判断します。
- 売却が本人(被後見人)の利益にかなっているか
- 介護・医療・生活費の確保
- 不要な不動産の維持コスト削減 など
- 売買価格が相場と比べて不当に安くないか
- 複数社の査定書があるか
- 急ぎ売りを悪用されていないか
- 売却相手が適切か
- 後見人自身・親族など「利益相反」になっていないか
- 特に親族間売買の場合は慎重に見られる
- 売却代金の使い道が妥当か
- 預貯金として適切に管理されるか
- すぐに親族が取り崩してしまうような計画ではないか
これらを説明するために、
- 査定書
- 売買契約案
- 本人の収支状況・介護費用の見込み
- 預貯金・他の資産状況
といった資料を一式まとめて提出します。
許可までの期間
これも裁判所や事案によりますが、
- 申立て〜審理〜許可決定まで:1〜2ヶ月程度
が多い印象です。
急いでいても、
「後見人選任(数ヶ月)+売却許可(1〜2ヶ月)」
という時間は最低限かかる、という前提でスケジュールを組む必要があります。
ステップ⑥ 許可後の契約・決済・引き渡し
許可が出て初めて「売買契約」が結べる
家庭裁判所の許可決定が出たら、
- 後見人が売主として正式に売買契約を締結
- 決済日に、売却代金を受領
- ローン返済や諸費用を精算したうえで、残額を本人財産として管理
という流れになります。
契約書には通常どおり、
- 成年後見人が「◯◯◯◯(被後見人)の成年後見人として」
- 被後見人の代理人として契約している
旨を記載します。
売却代金は「後見人の財布」ではなく「本人の財産」
売却して得たお金はあくまで本人の財産であり、
- 後見人が自由に使えるわけではない
- 高額な支出(自宅購入・多額の贈与など)には、再び家庭裁判所の許可が必要なこともある
という点は、家族全員が理解しておく必要があります。
成年後見人付きの不動産売却で「つまずきやすいポイント」と対処法
つまずき① 「売却を急ぎたいのに、後見手続きが追いつかない」
- 施設入居が迫っている
- ローン返済・税金の支払いが厳しい
といった事情で「すぐ売りたい」という相談は多いですが、
後見人選任や許可手続きに時間がかかるのは避けられません。
【対処の考え方】
- 売却資金が入るまでの「つなぎ」として、親族内で一時的に費用を立て替える
- 金融機関と返済条件の見直しを相談する
- 税金や公共料金の支払い猶予・分納を検討する
など、「売却以外の短期的な資金対策」とセットで考える必要があります。
つまずき② 親族間の利害調整(「売りたい人」と「残したい人」)
- 後見人になった人は売却に前向き
- 他の兄弟姉妹は「親の家を売りたくない」と反対
といった構図もよくあります。
【ポイント】
- 後見人は「相続人の代表」ではなく、「本人の代理人」である
- 「将来の相続をどうするか」と「今の本人の生活をどう守るか」は別問題
専門家(弁護士・司法書士・不動産会社など)を交えて、
- 本人の生活・介護の必要性
- 家を残す場合にかかるコスト
- 将来の相続時に起こりうるトラブル
を一緒に整理し、
「本人にとって何がベストか」を基準に話を進めることが重要です。
つまずき③ 親族への売却(親族間売買)の難しさ
- 後見人になった人が、その不動産を自分で買い取りたい
- 別の相続人が「自宅として引き継ぎたい」
というケースは多いですが、
利益相反の問題が生じやすく、家庭裁判所も非常に慎重に見ます。
【対処の方向性】
- 第三者への売却を基本とする(相場からの乖離が少ないため)
- 仮に親族に売る場合でも、
- 複数社の査定を取り、相場価格での売買にする
- 利益相反を避けるために、後見人とは別の親族 or 第三者が買主になる形を検討する
など、「本人の利益が最優先」であることを、資料と価格で証明する必要があります。
ホームワーク株式会社の専門家コメント
ホームワーク株式会社
(東京都内で相続不動産・成年後見案件・空き家整理を含む不動産売却とリフォーム再生を手がける会社)
「成年後見人が関わる不動産売却は、
- 通常の売却より“ひと手間もふた手間も多い”のは確かです。
- ですが、その手間はすべて『本人の財産と生活を守るため』のものでもあります。
現場で感じるのは、
- 『後見のことをよく知らないまま、本人名義で売ろうとしてしまっている』
- 『買主が決まってから、後見や裁判所の話が出て、取引が止まってしまう』
という“順番の逆転”が非常に多いということです。
大切なのは、
- 本人の状況と、売却の必要性を整理する
- 成年後見人が必要かどうかを専門家と確認する
- 後見人の選任と並行して、不動産の査定や売却シミュレーションを進める
- 買主候補や条件を固めたうえで、家庭裁判所の許可を得る
という“正しい順番”で進めることです。
ホームワーク株式会社では、
- 相続・後見に詳しい司法書士・弁護士との連携
- 後見人や親族向けの売却価格シミュレーション資料の作成
- 家庭裁判所への説明に耐えうる『価格の根拠』の提供
- 空き家化した実家の片付け・リフォームも含めた出口設計
までをワンストップでサポートしています。
『親が認知症で、家をどうするか困っている』
『施設費用を捻出したいが、後見や裁判所が関わるとややこしそうで手が止まっている』
という段階からで構いません。
まずは、法的な枠組みと不動産の現実的な選択肢を、一緒に整理するところから始めていければと思います。」
よくある質問(FAQ)
Q1. 成年後見人がいない状態で、家族の同意だけで不動産を売ってしまったらどうなりますか?
A. 本人に判断能力がないと認められる場合、その売買契約は「無効」と主張されるリスクがあります。
後から成年後見人が選任されると、契約の有効性を巡って争いになる可能性が高く、
買主側もローン実行をためらうため、実務上も非常に危険です。
Q2. 成年後見人の選任だけで、不動産を売ることはできますか? 家庭裁判所の許可は必須ですか?
A. 不動産の売却は「重要な財産行為」にあたるため、
法定後見(後見・保佐・補助)のいずれの場合も、
家庭裁判所の許可を得ることが必要と考えられています。
許可を得ないまま売却した場合、後から問題になるリスクが高いです。
Q3. 後見人になった家族が、本人の家を買い取ることはできますか?
A. 利益相反の問題があるため、家庭裁判所は非常に慎重に判断します。
原則として、
- 第三者への売却
- または、後見人とは別の親族が買主となる形
が望ましいとされています。
やむを得ず後見人が買主となる場合でも、
相場に基づいた適正価格・複数の査定書などが必須です。
Q4. 成年後見の申立てをせずに、任意後見契約だけで売却できますか?
A. 任意後見の場合でも、実際に効力を発生させるには「任意後見監督人の選任」が必要であり、
不動産売却については、やはり家庭裁判所の関与が必要になります。
法定後見(成年後見)・任意後見のどちらが適切かは、弁護士・司法書士などと相談のうえで判断してください。
Q5. 後見人選任にはどれくらい費用がかかりますか?
A. 裁判所への収入印紙・郵券・鑑定費用(必要な場合)などで数万円〜十数万円程度が目安です。
専門職(弁護士・司法書士等)に申立てを依頼する場合は、別途報酬がかかります。
また、後見人が専門職の場合、毎月の報酬(数万円程度)が本人の財産から支払われるのが一般的です。
Q6. 成年後見人がついていることは、買主側に必ず伝えないといけませんか?
A. はい。
- 契約の当事者が成年後見人であること
- 被後見人本人のための売却であること
- 家庭裁判所の許可が前提であること
は、契約上非常に重要な事項ですので、必ず説明・記載する必要があります。
Q7. 売却代金は、相続人で分けてもいいのですか?
A. いいえ。
売却代金はあくまで被後見人本人の財産であり、
本人が亡くなるまでは相続人で分けることはできません。
介護費・医療費など、本⼈のための支出には使用できますが、
相続対策としての生前贈与などは制限されます。
Q8. 将来の相続も見据えて売却したいのですが、後見人は相続税対策までできますか?
A. 成年後見制度は「本人の利益保護」が目的であり、
将来の相続人の相続税対策(節税)を主目的とした行為には慎重であるべきとされています。
必要な範囲での不動産売却は許可されやすいですが、
明らかに相続税対策が目的の取引は、裁判所の許可が得られない可能性があります。
Q9. 親がまだ“なんとなく”分かっている状態ですが、早めに対策する方法はありますか?
A. 本人にまだ判断能力が十分あるうちに、
- 任意後見契約
- 遺言書作成
- 生前贈与・家族信託
などの手段を検討することができます。
これらは成年後見とは別の制度なので、
弁護士・司法書士と連携しながら、不動産とセットで検討するのがおすすめです。
Q10. まずは何から相談すればいいでしょうか?
A. 次のような情報をお伝えいただければ、初回相談としては十分です。
- 不動産の種類(戸建て・マンション・土地)とおおよその場所
- 所有者(本人)の年齢・健康状態・生活状況
- 現在の利用状況(空き家・本人居住・賃貸中など)
- 売却を検討している理由(介護費用・施設入居・相続整理など)
- どのくらいの期限感で売却したいか
ホームワーク株式会社では、
- 後見が必要かどうかの“入り口の整理”
- 相続や後見に詳しい司法書士・弁護士のご紹介
- 売却価格・スケジュールのシミュレーション
- 空き家化した家の片付け・リフォームも含めた出口戦略の検討
までを一括でサポートしています。
「成年後見と言われて不安だが、何から手をつけてよいか分からない」という段階から、お気軽にご相談ください。
千代田区で不動産売却をご検討の方へ
不動産売却は、
流れを理解したうえで進めることで
不安と失敗を大きく減らせます。
ホームワークでは、
千代田区の不動産売却について、
準備段階から引き渡しまで
一貫してサポートしています。【お問い合わせ窓口】
ホームワーク株式会社
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