【結論】係争中でも売却は「理論上可能」。ただし買主が極端に限られ、訴訟内容の整理と専門家同席のうえで“出口戦略”を組み立てる必要がある
所有権や境界、賃貸借、共有持分などをめぐって係争中(裁判・調停・紛争中)の不動産でも、
「売却そのもの」は法律上不可能ではありません。
しかし現実には、
- 買主側から見ると「裁判リスク付き物件」であり、一般の個人はほぼ敬遠
- 金融機関のローンも付きにくく、現金で買える投資家・業者が中心ターゲット
- 訴訟の結果次第で権利関係や価値が変わりうるため、契約条件・表現を誤ると
後々の責任問題に発展しやすい
という、難易度の高い売却になります。
重要なのは、
- 「どのような係争か」を正確に整理する
- その結果、売却が今できるのか/終結後にすべきなのかを見極める
- 売る場合は、裁判リスクを織り込んだ条件と価格で、ターゲットを絞って売る
というステップで、
弁護士・不動産会社がセットになって出口戦略を考えることです。
以下では、
- 係争中不動産の典型パターン
- 売却にあたっての注意点
- 実際の進め方の考え方
を整理して解説します。
どんな「係争中不動産」があるのか?代表的なパターン
1. 所有権そのものを争っているケース
- 遺産分割協議がまとまらず、遺産分割調停・審判になっている
- 生前贈与・売買の有効性を争う訴訟(真偽不明の売買契約書など)
- 「登記名義はAだが、本当の所有者はBだ」と主張している場合
【ポイント】
- 最も根本的な争いであり、「誰が売主なのか」が確定していない状態
- 判決・和解の内容次第で、
- 所有者が変わる
- 持分割合が変わる
といった結果になりうる
→ 原則として「裁判の帰趨を見てから売却を検討すべき」ゾーンです。
2. 境界・越境を争っているケース
- 境界確定訴訟
- 越境物(塀・屋根・配管・樹木など)の撤去・使用料請求
- 面積の差異をめぐる紛争
【ポイント】
- 土地の「どこまでが自分のものか」が確定していない状態
- 裁判の結果次第で、
- 面積が減る(セットバック・越境解消など)
- 使用条件が付く
といった影響が出る可能性
→ ただし、争っている事実と想定されるリスクを織り込めば、
投資家や隣地所有者などに売却可能なケースもあります。
3. 賃貸借関係(賃料・立退き・原状回復)を争っているケース
- 家賃滞納を理由にした賃貸借契約解除・明渡請求訴訟
- 立退き料・原状回復工事の範囲を争っている
- 定期借家・定期借地の終了をめぐる紛争
【ポイント】
- 「誰がいつまで使えるか」「いくらで使うか」の争い
- 判決・和解により、
- 賃料水準
- 空室化のタイミング
が変わる可能性
→ 収益物件としての利回りや出口想定に影響しますが、
内容を正しく開示すれば、投資家にとっては「織り込み済みリスク」になり得ます。
4. 共有関係(共有物分割)を争っているケース
- 兄弟・親族同士での共有状態が続き、
「売る/売らない」「分筆する/しない」で対立 - 共有物分割訴訟・調停が進行中
【ポイント】
- 一部共有者が強く反対している場合、
全員の同意を得た通常売却は困難 - 裁判所主導で競売や分筆・代金分配を命じる形に進むことも
→ 裁判所の判断を前提にした共有物分割の「出口」と売却をセットで設計する必要があります。
係争中でも「売却しやすい」ケースと「避けるべき」ケース
売却を検討しやすいケース
- 係争が「境界・越境・賃貸条件」などで、
所有権そのものを否定するものではない - 訴訟の争点とリスクが比較的明確で、
「負けた場合の最悪シナリオ」も想定しやすい - 買主が
- 投資家
- 不動産業者
- 隣地所有者
など、プロ寄りでリスクを理解できる層を想定できる
売却を急ぐべきでない(慎重にすべき)ケース
- 「本当に自分が所有者なのか」が争われている
- 今の登記名義が覆る可能性が一定程度ある
- 訴訟の行方次第で、
- そもそも売る権限がなかった
- 買主に所有権を渡せなくなる
リスクがある
こうしたケースでは、
- 係争中に売却すると、
後から「売主としての責任」「損害賠償リスク」が極めて高くなる - 実務上も、弁護士からストップがかかることがほとんど
→ 基本的には、裁判・調停の結果が出てから売却方針を決めるのが無難です。
係争中不動産を売るときの“現実的な進め方”
ステップ① まずは「何が・どこまで」争われているかを紙に書き出す
感情的な「揉めている」ではなく、事実ベースで整理します。
- どんな訴訟・調停か(事件名・裁判所)
- 原告・被告は誰か
- 争点は何か(所有権/境界/賃料/共有物分割など)
- いつから係争中か
- すでに出ている判断(仮処分・和解案など)はあるか
- 担当の弁護士がいるか(いるなら誰か)
このメモは、
- 弁護士への相談
- 不動産会社への相談
どちらにも役立ちます。
ステップ② 弁護士に「売却を前提とした相談」をする
係争中不動産の場合、
不動産会社に行く前に弁護士への相談が必須と考えた方が良いです。
【弁護士に確認すべきこと】
- 今の段階で、その不動産を「第三者に売る」ことは法律上・実務上可能か
- 売却しても、係争に悪影響が出ないか(あるいは軽微か)
- 売却する場合、
- 相手方の同意が必要か
- 裁判所の許可が必要か
- 売却代金を
- どこまで自由に使えるか
- どこまでが供託・保全・債権者への弁済に回るのか
ここで「売却してはいけない」と明確に止められた場合は、
基本的に裁判の結論を待つしかないと考えるべきです。
ステップ③ 不動産会社に「係争中であることを開示」したうえで査定
弁護士から「条件付きなら売却可」となったら、
次に不動産会社へ。
【このときのポイント】
- 係争の概要(弁護士にOKをもらった範囲で)を隠さず伝える
- 「一般エンドユーザー向け」よりも、
投資家・業者向けの実績がある会社を選ぶ - 必要に応じて、弁護士と不動産会社をつなぎ、
契約条項や告知内容のすり合わせをしてもらう
査定では、
- 係争がなかったと仮定した場合の「通常価格」
- 係争リスクを織り込んだ「現実的な売却価格(≒投資家・業者価格)」
の両方を出してもらうのが理想です。
ステップ④ 「誰に売るか」を最初に決める(ターゲット設定)
係争中不動産の買主候補は、ほぼ次のような層に限られます。
- 不動産業者(自社買取・再販)
- 投資家(リスクを織り込んだ利回り重視)
- 隣地所有者(境界・一体利用を目的)
逆に、
- 一般のマイホーム希望者
→ 裁判リスクを理解・許容しにくく、ローンも付きにくい
ため、ターゲットから外した方が現実的です。
【ターゲットごとの特徴】
- 業者
→ スピードと確実性は高いが、価格は抑えめ(6〜7割程度に落ちることも) - 投資家
→ 利回り次第で前向きだが、係争リスクに敏感 - 隣地所有者
→ 条件がハマれば思わぬ高値の可能性もあるが、交渉力が強くなる
ステップ⑤ 契約書・重要事項説明書で「係争の事実」を明記する
係争中売却で最も重要なのは、
「係争の事実をどこまで・どう表現して買主に伝えるか」
です。
- 告知書・重要事項説明書に
- 係争の内容
- 現在の状況
- 想定されるリスク(弁護士と相談のうえ記載)
- 売買契約書の特約で
- 将来の判決結果をどう扱うか
- 売主・買主の責任範囲
をできるだけ明確にしておく
【例(あくまでイメージ)】
- 「現在、○○事件(事件番号:××)が係争中であり、その結果により〇〇の負担が発生する可能性があります。買主はこれを承知のうえで本物件を取得するものとします。」
- 「当該訴訟の結果、本件不動産に重大な影響が生じた場合でも、売主は〇〇を除き一切の責任を負わないものとする。」 等
※文言は、必ず弁護士のチェックが必要です。
係争中不動産を「売るか・待つか」判断するための考え方
売るメリット
- 裁判の長期化リスクから早めに離脱できる
→ 精神的負担が軽減 - 固定資産税・維持費・ローン返済の負担から解放
- 判決によって不利な評価が出る前に、
まだ価格があるうちに売却できる可能性
売るデメリット
- 係争リスクを織り込むため、
通常よりかなり安い価格になることが多い - 売却代金の全額を自由に使えない
→ 債権者・相手方との和解金・供託金に回る可能性 - 判決結果次第では、
「安く売らなくても良かったのでは」と後悔する可能性
待つメリット(裁判・調停の結論を待つ場合)
- 勝訴・有利な和解となれば、
価格・条件を引き上げて売却できる可能性 - 所有権・境界・権利関係がクリアになり、
一般エンドユーザーにも売りやすくなる
待つデメリット
- 裁判が長期化し、数年単位で拘束されることもある
- その間、固定資産税・維持費・ローンなどの負担が継続
- 市況悪化・建物老朽化により、
結果として売却価格が下がるリスク
専門家コメント
ホームワーク株式会社 代表取締役(トラブル物件・相続・係争案件担当)
- 相続争い・共有トラブル・境界訴訟などを抱えた不動産の売却実績多数
- 弁護士・司法書士・測量士と連携し、係争案件の出口戦略をサポート
コメント
「係争中の不動産については、
- 『こんな状態では絶対に売れないのでは?』
- 『何も言わずに売ってしまえないか?』
という、両極端なご相談を受けることが多いです。
実務の感覚としては、
- “何も言わずに売る”という発想は、法的にも倫理的にも絶対にNG
- 一方で、“係争中だから絶対に売れない”というわけでもなく、
条件とターゲットを絞れば出口を作れるケースも少なくない
というのが正直なところです。
大切なのは、
- まず弁護士に、**『売却を視野に入れてもよいか』**を確認すること
- そのうえで、不動産会社と一緒に
- 通常時の価格
- 係争中に売る場合の価格・条件
を比較すること
です。
『このまま裁判の結果を待つべきか、それとも今のうちに手放すべきか』
という悩みは、とても重く感じられると思います。
だからこそ、
感情だけで判断するのではなく、
“法的リスク”と“お金・時間の損得”を整理したうえで、
ご自身にとって一番納得感のある出口を一緒に探していければと考えています。」
よくある質問(FAQ)
Q1. 係争中でも、とりあえず買主には黙って売ってしまっていいですか?
A. 絶対にやめるべきです。
後から係争の事実が判明した場合、
- 契約不適合責任(旧・瑕疵担保責任)
- 不法行為責任
- 損害賠償請求・契約解除
など、非常に大きな法的リスクを負うことになります。
Q2. 裁判が終わるのを待ってから売った方が良いですか?
A. 所有権そのものを争っている場合は、
原則として「終結を待つ」のが安全です。
一方、境界・賃貸条件などの場合は、
- 裁判の見通し
- 今売る場合の価格
- 待った場合のコスト
を比較して判断する余地があります。
弁護士+不動産会社とセットで検討すべき内容です。
Q3. 係争中でも、銀行ローンを利用して買ってくれる人はいますか?
A. 一般的にはかなり難しいです。
金融機関は、権利関係が曖昧・不安定な物件には
融資に慎重になり、
- 融資不可
- 極めて厳しい条件(低LTVなど)
となることが多いです。
現金購入がメインターゲットと考えた方が現実的です。
Q4. 隣地との境界訴訟中ですが、隣地の人に売ることはできますか?
A. 可能なケースがあります。
むしろ、隣地所有者にとっては
- 境界問題の解消
- 一体利用による価値向上
というメリットがあるため、
交渉次第では前向きな買主になり得ます。
ただし、交渉は感情面の摩擦も大きいため、
不動産会社・弁護士を通じて進めるのが安全です。
Q5. 裁判中の物件を売ったお金は、自由に使えますか?
A. ケースバイケースです。
- 債権者への返済
- 和解金・損害賠償の支払い
- 供託
などに充てる必要がある場合もあります。
必ず弁護士と相談して、使途を確認してください。
Q6. 係争中であることを不動産会社に伝えたら、断られることはありますか?
A. あります。
係争案件に不慣れな会社や、
リスク管理の観点から扱わない方針の会社もあります。
その場合は、
- 相続・トラブル物件
- 任意売却・係争案件
に慣れた不動産会社を探して相談すると良いです。
Q7. 訴訟相手の同意なしに売却しても問題ありませんか?
A. 訴訟の内容によります。
- 所有権をめぐる争い
- 共有物分割
などの場合は、
相手方の同意や裁判所の関与が必要になることもあります。
必ず弁護士の判断を仰ぐべきポイントです。
Q8. まず何から始めればよいですか?
A.
- 今の係争内容を紙に整理する(事件名・争点・当事者・進行状況)
- 担当弁護士、または弁護士に新規相談し、「売却を視野に入れてよいか」確認
- 弁護士のOKが出た範囲で、不動産会社に査定と売却可能性の相談
という流れがおすすめです。
「係争中だから売れない」と決めつけず、
まずは法的リスクとお金の整理から、一緒に進めていきましょう。
千代田区で不動産売却をご検討の方へ
不動産売却は、
流れを理解したうえで進めることで
不安と失敗を大きく減らせます。
ホームワークでは、
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