【結論】旧借家法物件が売りにくいのは「借主保護が非常に強く、自由に使えないリスク」が大きいから
旧借家法(1991年までの契約に適用)のまま残っている物件は、
- 借主の権利が非常に強く保護されている
- オーナー(所有者)が自由に解約・立ち退きさせにくい
- 立ち退きのために高額な立退料が必要になるケースが多い
- 将来自由に建替え・再開発できるかが読みにくい
といった理由から、一般の買主・投資家ともに敬遠されやすく、
結果として「売りにくく・値が付きにくい物件」になりがちです。
売却を検討する際には、
- 現在の契約が本当に旧借家法なのか
- 契約更新の経緯・合意内容はどうなっているか
- 借主との関係性・立退きの現実性
- 旧借家法特有のリスクを、買主にどう説明するか
といった「権利関係」を丁寧に整理しておくことが、
価格・スピード・トラブル回避のすべてにおいて重要になります。
旧借家法適用物件とは?まず押さえるべき基本
旧借家法と現行「借地借家法」の違い(ざっくり)
- 旧借家法
→ 1991年12月までに締結された借家契約に適用
→ 借主保護色が非常に強く、「正当事由」がなければオーナーからは解約しづらい - 現行の借地借家法
→ 1992年1月以降の新規契約に適用
→ 依然として借主保護は強いものの、定期借家契約など期間満了で終わる契約も選べる
旧借家法が適用される賃貸借契約は、
- 「期間満了」や「更新拒絶」を理由に簡単には終了させられない
- オーナー側から契約を終わらせるには、
かなり強い「正当事由」+相当な立退料が求められやすい
という特徴があります。
旧借家法物件が残りがちなケース
- 1960〜80年代に建てられた共同住宅・長屋
- 1階店舗+上階住居(テナントビル・商店+アパート)
- 相続で引き継がれ、借主と長年の関係が続いている物件
- 契約更新のたびに「借地借家法への切り替え」や
契約内容の見直しをしてこなかったケース
こうした物件は、外から見ると普通の「古いアパート・店舗」に見えても、
中身(契約)が旧借家法のまま、ということがよくあります。
なぜ旧借家法物件は「売りにくい」のか(3つの核心理由)
理由① 借主の権利が非常に強く、オーナーの自由度が低い
旧借家法では、
- 契約期間が満了しても、借主が住み続ける意思を示せば、簡単には追い出せない
- オーナーからの解約・更新拒絶には
「正当事由」+借主への配慮(立退料など)が強く求められる
という仕組みになっています。
【買主の目線】
- 「将来、自分が使いたいと思っても、いつ明け渡してもらえるか分からない」
- 「建替え・売却・再開発のタイミングを、自分の意思でコントロールしにくい」
と感じるため、
- 自宅用として買う人:ほぼ検討対象外
- 投資家:買うとしても価格を大きくディスカウントして条件を見ます。
理由② 立退料や交渉コストが大きく、収支が読みづらい
旧借家法下の借主を退去させるには、
- 「老朽化でどうしても建替えが必要」
- 「貸主自身の居住がどうしても必要」
などの強い正当事由に加えて、
- 数百万円〜数千万円単位の立退料
- 長期にわたる交渉・裁判リスク
を見込まなければならないケースがあります。
【買主の目線】
- 将来の立退料がいくらになるか読めない
- 交渉が何年かかるかも分からない
- 最悪の場合、一生借主が居続ける可能性もある
→ その結果、
- 「評価が難しすぎるので、そもそも買わない」
- 「買うとしても、立退きにかかるコストを見込んでかなり安くないと手を出せない」
となりやすいのです。
理由③ 貸主・借主・相続人など、権利関係が複雑化しがち
旧借家法物件は、契約期間が長い分、
- オーナーが代替わりして相続人が複数
- 借主側も代替わりして名義が曖昧
- 口頭での約束・昔の覚書などが残っており、契約書と実態がズレている
といったケースが頻発します。
【買主の目線】
- 「権利関係がきれいに整理されていない物件」は、最初から候補から外す
- 買った後に想定外の請求をされるのが怖い
(『昔からこうしてきた』と主張される など)
→ 結果として、「扱いに慣れた一部の専門投資家」以外からは
ほとんど検討されなくなり、売却の間口が狭くなります。
売却前に必ず確認すべき「権利関係」のポイント
旧借家法物件を売りに出す前に、
最低限チェックしておくべき項目を挙げます。
① 現在の賃貸借契約が本当に「旧借家法」かどうか
- 最初の契約締結日(1991年12月以前かどうか)
- その後の更新時に「契約内容を変更していないか」
- 借地借家法を前提とした新契約を結び直していないか
- 定期借家契約に切り替えていないか など
※「古いから=旧借家法」とは限らず、
途中で契約内容を変更しているケースもあります。
② 現在の借主は誰か(名義と実際の居住者)
- 契約書上の借主と、実際に住んでいる人・使っている人が同じか
- 相続・事業承継・家族間の名義変更があったか
- 無断転貸・又貸しが行われていないか
名義と実態がズレていると、
売却後に**「そもそも誰と交渉すべきか」**でトラブルになりかねません。
③ これまでの更新・賃料改定・口頭合意の履歴
- 契約更新のたびに交わした書面の有無
- 賃料増減に関する合意(書面/口頭)
- 「将来建替え時には協力する」等の覚書があるか
買主に渡せる資料として、
- 過去の契約書一式
- 更新契約書・覚書
- 家賃の入金履歴(通帳)
はできるだけ揃えておくと、
「リスクの見える化」が進み、売却の交渉がしやすくなります。
④ 地主・底地権者との関係(底地も他人所有の場合)
借家だけでなく、
- 借地(底地は別の地主の所有)
- その上に旧借家法の借家人が居住
という「二重の権利関係」になっている例もあります。
この場合、
- 地主との契約内容(借地権・地代・更新条件)
- 地主との関係性(連絡の取りやすさ、過去のトラブル有無)
も、売却に大きく影響します。
旧借家法物件を売却するときの「現実的な進め方」
ステップ① 権利関係の棚卸し(契約書・履歴の収集)
まずは、次のようなものを探し、整理します。
- 賃貸借契約書(初回+更新分)
- 変更契約書・覚書
- 家賃の入金記録(通帳)
- 借地契約書(底地が他人の場合)
- 相続・贈与に関する書類(遺言書・遺産分割協議書など)
ここをおろそかにしたまま「とりあえず売り出す」と、
問い合わせが来てから慌てて探すことになり、
信用も落ち、値下げ要因にもなりかねません。
ステップ② 借主との関係性・意向の確認(可能な範囲で)
- 建替えや立退きに対する考え方
- これからも住み続けたいかどうか
- 立退きの場合、どの程度の条件なら検討余地があるか
などを、可能な範囲でヒアリングしておくと、
買主への説明材料になります。
ただし、
- いきなり「出て行ってほしい」とストレートに切り出すと
関係悪化のリスクがあるため、 - 不動産会社や弁護士を挟みながら、段階的にコミュニケーションを取るのが無難です。
ステップ③ 「そのまま収益物件として売る」か「立退き前提で売る」かを決める
大きく分けて、
- 借主が居住したまま、賃貸中物件として売却
→ 将来の立退き交渉・建替えは買主に委ねる - 売却前〜売却と同時に立退き交渉を進める
→ 更地・空室で売却し、価格を上げる狙い
という2つの方向性があります。
【現実的な判断軸】
- 費用と時間をかけてでも高く売りたいのか
- 価格を多少落としても、早く確実に売りたいのか
- 借主との関係性をどこまで崩さずに進めたいか
これらを家族・共同所有者とも共有したうえで、
不動産会社や弁護士と一緒に方針を決める必要があります。
ステップ④ 旧借家法物件の取り扱いに慣れた不動産会社に依頼する
一般的な居住用マンション中心の不動産会社だと、
- 旧借家法・借地・底地・立退き交渉の経験が少ない
- リスクを恐れて「とりあえず安くしか値付けできない」
ことも多く、
結果として相場より低い価格でしか売れない可能性があります。
- 旧借家法・借地・底地案件の実績があるか
- 過去に立退き交渉・権利調整を伴う売却を扱っているか
を確認し、得意な会社を選ぶことがとても重要です。
専門家コメント
ホームワーク株式会社 代表取締役(借地・旧借家法案件担当)
- 借地・底地・旧借家法物件など「権利関係の重い物件」を多数取り扱い
- 年間100件超の売却サポートのうち、立退き・権利調整案件も多数
コメント
「旧借家法が適用される物件は、
一見すると“ただの古いアパート・一戸建て”に見えても、
中身(契約・権利関係)はまったく別物です。
オーナー様からすると、
- 『昔からの付き合いだから』
- 『とりあえず家賃さえ入っていれば問題ない』
という感覚で長年維持されてきたケースが多いのですが、
いざ売ろうとすると、
- 借主の権利が非常に強い
- 立退き・建替えのハードルが高い
- 権利関係が複雑で、一般の買主が手を出しづらい
といった問題が一気に表面化します。
大切なのは、
- まず現状の契約・権利状態を“事実ベース”で整理すること
- 借主との関係性や将来の活用方針を踏まえ、
『どこまでを自分で整理するか』『どこからを買主に委ねるか』を決めること
です。
旧借家法物件だからといって、
必ずしも『売れない』『安くたたき売るしかない』わけではありません。
ただし、通常の不動産よりも準備と専門性が必要なのは事実です。
『うちの物件が旧借家法かどうかもよく分からない』という段階でも構いませんので、
契約書や過去の資料を一度一緒に確認しながら、
最適な出口戦略を考えていければと思います。」
よくある質問(FAQ)
Q1. 旧借家法が適用されているかどうかは、どうやって分かりますか?
A. 一般には、
- 最初の賃貸借契約の締結日
- その後の更新・契約変更の内容
を確認して判断します。1991年12月以前の契約で、その後も旧借家法を前提とした更新を続けている場合は旧借家法物件の可能性が高いです。契約書一式を専門家に見てもらうのが確実です。
Q2. 旧借家法物件は、普通の物件と比べてどれくらい安くなりますか?
A. 物件の内容・立地・賃料水準・借主との関係によって大きく変わりますが、
「更地にできる前提の土地」と比べると、
数割ディスカウントされることも珍しくありません。
立退きが現実的かどうかで評価が大きく変わります。
Q3. 売却前に、オーナー側だけで勝手に立退き交渉を始めても大丈夫ですか?
A. 感情的な対立を生みやすいため、あまりおすすめできません。
立退き交渉は、法的なルール・相場観・伝え方が非常に重要です。
不動産会社や弁護士と相談しながら、段階的に進めた方が安全です。
Q4. 買主側から見て、旧借家法物件を買うメリットはありますか?
A. リスクを理解し、長期保有前提であれば
「相場より安く買える」「安定した家賃収入が見込める」
といったメリットもあります。ただし、権利調整や将来の出口戦略を
自分で組み立てられる上級者向けの投資対象と言えます。
Q5. 旧借家法物件でも、定期借家契約に切り替えることはできますか?
A. 原則として、既存の借主との合意があれば契約条件の変更は可能ですが、
借主にとって不利な条件変更であるため、現実にはハードルが高いです。
合意形成のプロセスや条件設定を含め、弁護士等との相談が必須です。
Q6. 相続で旧借家法物件を引き継ぎました。すぐ売った方がいいですか?
A. 一概には言えません。
- 物件の立地・収益性
- 借主との関係
- ご家族の意向(保有か売却か)
を踏まえて判断する必要があります。
ただし、何もせず放置すると、権利関係がさらに複雑化し、
将来の売却がより難しくなる可能性はあります。
Q7. 地主(底地権者)との関係も整えないと売れませんか?
A. 借地権と旧借家法が絡むケースでは、
地主の承諾や協力が必要になる場面が多いです。
売却形態(借地権のみ売るのか、底地との同時売却か等)によって
必要な手続きが変わるため、早めに方針を整理することが大切です。
Q8. 旧借家法物件の売却に強い不動産会社は、どうやって見つければいいですか?
A.
- ホームページで「借地・底地」「老朽化物件」「立退き」「権利調整」などを
明示的に扱っている会社 - 実績事例として旧借家法・借地案件を載せている会社
を目安に探すのがおすすめです。
査定依頼時に「旧借家法物件の売却経験はどれくらいあるか」も必ず確認しましょう。
Q9. 旧借家法物件を売却したときの税金(譲渡所得税)は、普通の物件と違いますか?
A. 基本的な計算方法・税率は同じです。
ただし、
- 建物がかなり古く、取得費計算が難しい
- 借地権・底地の評価が絡む
といった要素で複雑になりやすいため、
不動産に詳しい税理士に相談することをおすすめします。
Q10. まず何から始めればいいでしょうか?
A.
- 手元にある賃貸借契約書・更新書類・借地契約書をすべて集める
- 家賃の入金履歴や、過去の覚書・メモがあれば一緒に整理する
- それらを持って、旧借家法・借地案件に慣れた不動産会社や弁護士に相談する
という流れがおすすめです。
「自分の物件がどの程度“売りにくい”のか」「どのくらいの価格帯なら売れそうか」を
まずは客観的に把握することから始めましょう。
千代田区で不動産売却をご検討の方へ
不動産売却は、
流れを理解したうえで進めることで
不安と失敗を大きく減らせます。
ホームワークでは、
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