古い建物を売却するとき取得費はどうなる?築年数が古い場合の税金対策

お金

【結論】築年数が古い建物ほど「取得費の把握」と「特例活用」がカギ|放置すると税金が増えやすい

築年数が古い建物を売却する場合、

  • 取得費の資料が残っていない
  • 建物の評価がほとんどゼロに近い
  • 「どうせ古いから税金はあまりかからないだろう」と思っている

というケースが多いですが、現実には

  • 取得費を正しく計上できないと、税金(譲渡所得税)が増えやすい
  • 古い建物でも、リフォーム費用や解体費・相続税の一部などを取得費にできる場合がある
  • 築年数が古いからこそ使える「特例・控除」を押さえることで、税負担を大きく減らせる

というポイントがあります。

「古いから安く売れる=税金も少ない」とは限りません。
築年数が古い物件こそ、

  1. 取得費をどこまで積み上げられるか
  2. 使える特例(3,000万円特別控除など)を漏れなく使えるか

が、手取り額に大きく影響します。


目次

古い建物の売却で押さえるべき「取得費」の基本

取得費とは何か(おさらい)

不動産売却の税金(譲渡所得税)は、次の式で計算されます。

譲渡所得 = 譲渡価格 −(取得費+譲渡費用)

ここでいう取得費には、主に次のようなものが含まれます。

  • 土地・建物の購入代金
  • 購入時の仲介手数料
  • 登記費用・司法書士報酬
  • 不動産取得税
  • 建物の増改築・大規模リフォーム費用(資本的支出に該当するもの)
  • 相続時の相続税のうち、その不動産に対応する部分 など

築年数が古い建物で起きがちな「取得費の問題」

築年数が古い物件では、次のような事情で
取得費が小さく計上されてしまいがちです。

  • 売買契約書や領収書が残っていない
  • 昔に親が購入しており、詳細が分からない
  • 減価償却計算が必要なケースで、建物の取得費がほぼゼロと扱われる
  • 相続で取得したが、当時の資料を廃棄してしまった

取得費が小さい=譲渡所得(もうけ)が大きくなる
→ 結果として税金が高くなる構造なので、
「古いから仕方ない」で済ませると、払い過ぎになるリスクがあります。


築年数が古い建物の「取得費」の考え方

1. 土地部分は「古くなってもゼロにならない」

よく誤解されますが、価値がゼロ近くになるのは“建物”だけです。
土地については、築年数に関係なく

  • 購入したときの価格
  • 相続・贈与時の評価額

などをベースに取得費を考えます。

つまり、

  • 建物:減価償却で徐々に価値が減り、最終的にゼロ近くになる
  • 土地:原則として減価償却しない(取得費として残る)

という違いがあります。

2. 建物の取得費は「減価償却後の金額」

建物の取得費は、原則として

  • 取得価額から
  • これまでの減価償却費相当額を差し引いた金額

が、売却時点の取得費になります。

築年数がかなり古い場合、
この計算の結果、建物の取得費がほとんど残らないケースもありますが、

  • 過去の増改築・大規模リフォーム費用
  • 耐震改修工事費用

などがあれば、それらを取得費に加算できる可能性があります。

3. 取得費不明の場合の「概算取得費(5%)」という選択肢

売買契約書などが一切残っていない場合、
税法上認められている概算取得費を使うことができます。

概算取得費 = 譲渡価格 × 5%

ただし、

  • 実際に取得費が多くかかっているのに5%で計算してしまうと、
    結果として税金を払い過ぎる可能性が高い
  • 「何も資料がない」と決めつける前に、
    通帳・ローン書類・相続税申告書などから
    どこまで復元できるかを必ず確認すべき

という点には注意が必要です。


古い建物を売却するときの「税金対策」の具体策

築年数が古い物件でも、
次のような対応を取ることで、税負担を抑えられる可能性があります。

対策① 利用できる取得費を最大限「掘り起こす」

  • 古い通帳
  • 住宅ローン契約書・返済予定表
  • 不動産取得税・登録免許税の納付書
  • 増改築・リフォームの見積書・領収書
  • 相続税申告書(別表・明細書)

などを探し、取得費になり得るものをとにかく洗い出すことが第一歩です。

ポイント

  • 「契約書がない=終わり」ではなく、
    客観的な資料を積み上げて“合理的な取得費”を組み立てるイメージ
  • 分からない部分を、安易にすべて5%で済ませない

対策② 古い建物を「解体して土地として売る」場合の扱い

築年数が古く、建物としての価値がほぼない場合、

  • 先に建物を解体して更地にしてから売る
  • 建物付きのまま売る(買主側で解体)

という2つのパターンがあります。

解体費用は原則として取得費または譲渡費用に算入可能です。
(どちらで扱うかはケースによります)

  • 建物を取り壊した上で土地を売却した場合
    → 解体費用を取得費(または譲渡費用)に加算することで
    譲渡所得を抑えられる可能性があります。
  • 一方で、「建物付き」で売却する代わりに
    買主が解体する条件にして、解体費分を値引きする場合は、
    売主側の取得費にはならないため注意が必要です。

どちらが有利かは、

  • 売却価格の違い
  • 解体費用の見積り
  • 税金(譲渡所得税)の試算

を踏まえて判断する必要があります。

対策③ 自宅なら「3,000万円特別控除」を必ずチェック

古い建物でも、自分や家族が住んでいた「マイホーム」であれば、
居住用財産の3,000万円特別控除が使える可能性があります。

概要は次の通りです。

  • 自宅(一定の要件を満たすもの)を売却した場合、
    譲渡所得から最大3,000万円まで控除できる
  • 築年数や建物の古さにかかわらず、
    要件を満たせば適用可能
  • 他の特例(低率分離課税・買換え特例など)との併用条件に注意

古い一戸建てを売却する場合、
この特例を使うことで税額がゼロになるケースも多くあります。

対策④ 長期・短期の区分を意識する(所有期間5年超かどうか)

譲渡所得税の税率は、
不動産の所有期間によって大きく変わります。

  • 所有期間5年超:長期譲渡所得
    → 税率が低い(所得税+住民税で約20%程度)
  • 所有期間5年以下:短期譲渡所得
    → 税率が高い(所得税+住民税で約39%程度)

古い建物の場合はほとんどが「長期譲渡所得」に該当しますが、

  • 相続直後の売却
  • 名義変更・贈与を挟んだ後の売却

などでは、所有期間の起算点を慎重に確認する必要があります。


事例で見る:築年数が古い建物売却時の取得費と税金対策

事例① 築40年の実家(一戸建て)を相続後に売却

  • 売却価格:4,000万円(土地+建物)
  • 親が購入したのは40年以上前で、契約書は見当たらない
  • 相続税は申告済みで、申告書一式は手元にある
  • 相続後すぐに誰も住んでいない空き家の状態

【対応の流れイメージ】

  1. 相続税申告書で、その不動産の評価額を確認
  2. 固定資産税の評価証明書や古い資料から、
    親が購入した当時のおおよその金額レンジを税理士と検討
  3. リフォーム・増改築の記録があれば、それも取得費に加算
  4. 自宅として使われていた期間・空き家期間などを確認し、
    「3,000万円特別控除(もしくは空き家特例)」の適用可否を検討

【ポイント】

  • 書類が全くないと決めつけず、
    相続税申告書などから取得費の“復元”を試みる
  • 自宅として使われていた期間が長ければ、
    特例によって税負担を大きく圧縮できる可能性が高い

事例② 築35年・賃貸に出していたアパートを売却

  • 売却価格:7,000万円(土地+建物)
  • 建物は木造アパート、老朽化が進んでいる
  • 当初から事業用として所有し、長年減価償却してきた

【ポイント】

  • 建物の取得費は、減価償却によりほぼゼロになっている可能性が高い
  • その場合でも、
    • 土地の取得費
    • 過去の増改築・長寿命化リフォーム費用の一部
      を取得費に含められる可能性がある
  • 自宅ではないため3,000万円特別控除は使えないが、
    取得費を最大限拾うことが税金対策の中心になる

古い建物売却で「やってはいけない」NGパターン

NG① 「古いから税金は大したことない」と思い込む

  • 土地の値上がりや、相続時からの価格上昇により、
    想像以上の譲渡所得が出るケースがあります。
  • 特に都市部の土地は、築年数に関係なく
    地価が上がっていることが多いため要注意です。

NG② 取得費をまったく調べず、いきなり「5%」で申告する

  • 資料を探せばもっと大きな取得費を主張できたのに、
    安易に概算取得費を使ったせいで、
    税金を大幅に払い過ぎてしまうリスクがあります。

NG③ ネット情報だけで複雑なケースを自己判断する

  • 相続・贈与・減価償却・増改築・名義変更などが絡むと、
    取得費の扱いは一気に複雑になります。
  • 「自分のケースが一般論に当てはまるか」は、
    不動産と税務に詳しい専門家でないと判断が難しいことが多いです。

専門家コメント

ホームワーク株式会社 代表取締役(不動産売買・売却相談担当)

  • 居住用・相続不動産・古家付き土地の売却を年間多数サポート
  • 税理士と連携した譲渡所得税シミュレーションを実施

コメント

「築年数が古い物件の売却では、
『どうせ建物の価値はないから』『昔のことは分からないから』と
取得費の検討をあきらめてしまう方が少なくありません。

しかし実務では、

  • 土地の取得費
  • 過去の増改築・リフォーム費用
  • 相続税の一部
  • 解体費用

などを丁寧に拾っていくことで、
譲渡所得税を大きく抑えられるケースが多くあります。

一方で、根拠のない数字を大きく申告してしまうと、
税務署とのトラブルや追徴課税のリスクも出てきます。

大事なのは、

  1. まず“使えそうな資料”を徹底的に集める
  2. それをもとに、不動産会社や税理士と一緒に
    『どこまで取得費として主張できるか』を整理する

という現実的なステップを踏むことです。

『古い家だから税金はあまり気にしなくていい』と
思い込まずに、一度はシミュレーションしてみることをおすすめします。」


よくある質問(FAQ)

Q1. 築40年以上の古い家を売る場合、建物の取得費はゼロと考えるべきですか?
A. 減価償却の結果、建物の取得費がほぼゼロになるケースは多いですが、
過去の増改築・耐震工事・長寿命化リフォームなどがあれば、
その一部を取得費に含められる可能性があります。
また、土地の取得費は築年数に関係なく残ります。

Q2. 契約書がなくても、取得費を主張できますか?
A. 可能な場合があります。
ローン書類・通帳・税務申告書・領収書など、
ほかの客観的資料を積み上げて「合理的な金額」として説明できれば、
取得費として認められる余地があります。

Q3. 解体してから売った方が税金面では有利ですか?
A. 物件と条件によります。
解体費用を取得費(または譲渡費用)に加算できる一方で、

  • 解体前後で売却価格がどう変わるか
  • 買主のニーズ(古家付きでほしいか、更地がほしいか)
    を踏まえて判断する必要があります。
    試算のうえで決めるのが安全です。

Q4. 古い実家を相続して売却する場合、3,000万円特別控除は使えますか?
A. 一定の要件を満たせば利用できます。

  • 相続前に被相続人が自宅として住んでいたか
  • 相続後の利用状況(空き家か・賃貸か)
    などで適用可否が変わります。
    「空き家特例」が使えるケースもあるため、個別確認が必要です。

Q5. 概算取得費の5%と、実額の取得費は併用できますか?
A. 基本的には併用はできません。
概算取得費5%は「実額に代えて」使うものなので、
実額と二重に計上することは認められていません。
どこまで実額で行くか、どこから諦めるかは専門家と相談して決めましょう。

Q6. 長年貸していた古いアパートでも、3,000万円特別控除は使えますか?
A. 一般的に、居住用ではなく事業用・賃貸用不動産については
3,000万円特別控除は適用されません。
ただし、途中で自宅として使っていた期間があるなど、
特殊な事情があれば個別判断になります。

Q7. 税務署と税理士、どちらに相談した方がいいですか?
A. 税務署は制度の説明・一般的な取り扱いを教えてくれますが、
「納税者にとって最も有利なギリギリのライン」を教えてくれる立場ではありません。
具体的な節税や取得費の復元については、
不動産に詳しい税理士への相談をおすすめします。

Q8. 古い家を売るとき、不動産会社は税金の相談にも乗ってくれますか?
A. 不動産会社は税務申告の代理はできませんが、

  • 概算の税額シミュレーション
  • 提携税理士の紹介
    などでサポートしてくれるケースが多いです。
    実際の申告や最終判断は税理士と行います。

Q9. 取得費を多めに申告すると必ず税務調査になりますか?
A. 必ずではありませんが、
不自然に高い取得費や、根拠の薄い金額を申告すると、
税務署から疑問を持たれやすくなります。
調査の結果否認されれば、追徴課税のリスクがあります。

Q10. まず何から始めればよいですか?
A.

  1. 家・実家・倉庫などにある古い書類を「総ざらい」する
  2. ローンを組んだ銀行や、取引した不動産会社・司法書士に資料の有無を確認する
  3. 集まった資料を持って、不動産会社や税理士に相談する

という流れがおすすめです。
「どの資料が役立つのか分からない」という段階でも、
まずは一度まとめて専門家に見てもらうと、無駄なく整理できます。

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