【結論】既存不適格でも「違法建築ではない」ため売却は十分可能|ただし“建て替え・増改築は現行ルールになる”点を理解・説明できるかがカギ
既存不適格建築は、
- 今の建ぺい率・容積率・高さ制限などの基準には合っていないけれど
- 建てた当時の法律・建築基準には適合していた
建物を指します。
つまり、
- 違法建築(ルール違反)ではない
- ただし、建て替え・増改築をする時は「今のより厳しいルール」で判断される
という性格の建物です。
そのため売却時には、
- 「今の建物」はそのまま使えるが
- 「建て替えると“今より小さくなる・戸数が減る”可能性がある」
- 「増改築には、現行基準の制限がかかる」
といったポイントを押さえたうえで、
・買主にどう説明するか
・価格にどこまで織り込むか
を整理できれば、一般のエンドユーザーにも十分売却可能です。
以下で、
- 既存不適格とは何か(違法建築との違い)
- 売却時に評価が下がりやすい理由
- 再建築・改修の具体的な制限
- 現実的な売却・対処の考え方
を順番に解説します。
既存不適格建築とは?まず「違法建築」との違いを整理
既存不適格建築の定義
ざっくり言うと、次の2つを満たす建物が「既存不適格」です。
- 建築当時の法令・条例に適合していた(=合法に建てられた)
- その後の法改正・都市計画変更などで、
今の基準では適合しなくなっている
よくあるパターン:
- 建築当時:容積率200% → 現在:容積率150%に引き下げ
→ 延床180%の建物:当時はOK、今はオーバー - 建築当時:建ぺい率70% → 現在:60%
- 建築当時:高さ制限なし → 現在:高度地区で高さ制限導入
いずれも、**「違法になった」のではなく「基準が変わっただけ」**です。
違法建築との違い
違法建築(違反建築)
- 建てた当時のルールも守っていない
- 建築確認図と現況が大きく違う(無許可増築など)
- 今も「法令違反状態」
→ 行政指導・是正命令の対象になり得る。
既存不適格
- 建てた当時は建築確認を取り、ルール通りに建てている
- その後ルールが厳しくなっただけ
→ 行政が“違法扱い”しているわけではない。
この違いが、
- ローンの通りやすさ
- 一般の買主への売りやすさ
- 価格ディスカウントの幅
に直結します。
既存不適格建築が売却時に「嫌われがち」な理由
既存不適格=違法ではないのに、
なぜ評価が下がりやすいのか。主な理由は次の3つです。
理由① 将来の「建て替え」で同じボリュームを維持できない
- 現在:容積率150%なのに延床200%建っているマンション
- 現在:建ぺい率60%なのに70%建っている戸建
などの場合、
- 今の建物 → そのまま使える(原則OK)
- 将来建て替えるとき → 現行の容積率・建ぺい率を守らないといけない
結果として、
- 階数・戸数が減る
- 延床が小さくなり、部屋数・賃料総額が減る
など、「今と同じ価値」を将来再現できない可能性が高くなります。
買主から見ると、
「建て替えたら小さくなる物件」=長期的な資産価値が不安
となり、価格交渉の材料になりやすくなります。
理由② 増改築・用途変更時に「思ったより制限が厳しい」ことが多い
- 既存の床面積を大きく変えないリフォームは比較的OKでも、
- 増築・用途変更・構造をいじるような改修では、
「現行基準への適合」が要求されやすいです。
例:
- 既存不適格のアパートを
→ ファミリー向けに間取り変更+一部増床したい
→ 増床分を含めると現行容積率を大きくオーバー → 許可が出ない - 既存不適格のビルで
→ 1フロア丸ごとの用途変更(事務所→店舗など)を行う際に、
耐震基準・避難経路・駐車場台数など、今の基準を求められる
「ガッツリ直してきれいにすればいい」と思っていた買主が、
後から制限の強さに気づいて手を引くケースもあります。
理由③ 「既存不適格=なんとなく怖い」というイメージ
- 一般のエンドユーザーには細かい法令の違いが分かりづらい
- 「不適格」「オーバー」といった言葉の印象が悪い
- 将来の売却時にも、同じ説明&ディスカウントが必要になりそう
という“心理的ハードル”もあります。
ここを、
- 「違法ではない」
- 「こういう制限が将来出る可能性がある」
- 「その代わりに、今はこの価格で買える」
と論理的に説明できるかどうかが、売却成功の分かれ目になります。
既存不適格で「特に多い」3つのパターン
パターン① 容積率オーバー(延床面積が多すぎる)
- 現在の容積率:150%
- 実際の延床:200%
【将来の制限】
- 建て替え時は、延床150%までが上限
→ 部屋数・戸数・賃料総額が減る - 大幅な増改築は、原則として現行容積率を守る必要あり
【売却のポイント】
- 収益物件なら
「今の利回りは高いが、建て替え時は規模ダウン」を説明 - 自宅なら
「将来建て替え時に、今と同じ広さを確保しにくい」ことを伝える
パターン② 建ぺい率オーバー(敷地に対して建物の“面積”が大きい)
- 現在の建ぺい率:60%
- 建築面積:70%
【将来の制限】
- 建て替え時は「建ぺい率60%以内」に納める必要あり
→ 1階部分の広さが減る/駐車スペースが削られるなど
【売却のポイント】
- 「今は敷地いっぱいに建っていて広いが、将来は今ほど建てられない」
上で、“その分の割安さ”を価格で示す
パターン③ 高さ制限・斜線制限に引っかかる中高層建物
- 建築当時は高さ規制なし
- その後「高度地区」「絶対高さ制限」などが導入された
【将来の制限】
- 建て替え時に「高さ○mまで」「階数制限」に縛られる
- 現在より1〜2フロア低いビル・マンションしか建てられない可能性あり
【売却のポイント】
- 特に収益物件では
「将来の建て替え後の想定戸数・賃料」を投資家目線で整理して提示することが重要
再建築・改修時に知っておくべき具体的な制限
1. 建て替え(建物を一度壊して新築する場合)
原則として、
- 新築時には現行法をフル適用されます。
ということは、
- 容積率・建ぺい率・高さ・斜線
- 用途地域・防火規制・駐車場条例 など
すべて今の基準でチェックされるため、
- 「今より大きい建物」はほぼ建てられない
- 場合によっては「今よりかなり小さい建物」になることも
→ 既存不適格物件を買う=
「今あるボリュームを一度リセットしたら、もう元に戻せない」
という前提を理解しておく必要があります。
2. 増築(床面積を増やす工事)
- 少しの増築でも、増築部分+既存部分を合わせて
「現行の容積率・建ぺい率」を超える場合は
原則NGとされることが多いです。 - ただし、
ごく小規模で構造に影響が少ない増築など、
行政の運用・建築士の判断によって対応が変わる部分もあり、
必ず個別確認が必要です。
3. 大規模修繕・用途変更
- 構造をいじらない内外装リフォーム・設備更新
→ 多くは既存不適格でも問題なく可能な範囲 - 用途変更(例:事務所→店舗、住居→簡易宿所など)
→ 用途によっては、
- 駐車場台数
- 避難経路・階段幅
- 防火区画・排煙
など、現行基準を求められ、
思っていたより手がかかることがあります。
4. 耐震改修
- 旧耐震(1981年6月以前の基準)かつ既存不適格の建物では、
耐震診断の結果、
大規模な補強工事が必要になることもあります。 - 耐震改修は、
既存不適格のままでも
「安全性を高めるための工事」として前向きに評価されやすく、
行政の補助金制度が使える場合もあります。
既存不適格建築の「現実的な売却戦略」
戦略① 「きちんと説明したうえで、一般市場で売る」
前提条件:
- 違法建築ではなく、明確に既存不適格といえる
- ローンを出してくれる金融機関が存在する
- エリア・立地的に実需ニーズが強い
この場合、
- 物件概要・重要事項説明書に
「既存不適格(例:現行容積率を超過)」と明記 - 将来建て替え時の制限(ボリュームダウンの可能性)を
営業資料・説明でセットで伝える - 周辺相場からやや控えめな価格で出し、
「その分、今の広さ・利回りが得られる」という訴求をする
ことで、普通のエンドユーザーにも十分売却可能です。
戦略② 投資家・事業者向けに「収益性中心」で売る
- 収益用マンション・一棟アパート・店舗ビルなどの場合は、
とくに
- 現在の賃料収入・利回り
- 将来の修繕計画
- 建て替え時の想定プラン(ボリュームダウン後)
を整理したうえで、
- 「残り○年は今の利回りで運用 → その後は解体・売却」
- 「今後20年のトータルキャッシュフロー」
といった投資家目線の資料を用意すると、
既存不適格であること自体は
「価格に織り込めばよい問題」として受け入れられやすくなります。
戦略③ 将来の建て替え前提で“土地値+アルファ”として売る
- 土地としての価値が高いエリア
- 建物の残存寿命が短く、近い将来の建て替えが現実的
こうしたケースでは、
- 「今の建物はおまけ、実質は土地+既存のボリューム」という考え方で
- 将来、「現行基準内でどんな建物が建てられるか」の
ボリュームチェック(建築士の簡易プラン)を行い、 - それをもとに土地値中心の価格設定をする方法もあります。
売主側で「やっておいた方がいい準備」
① 建築確認書類・図面をできるだけ集める
- 建築確認済証
- 検査済証
- 確認申請時の図面(配置図・各階平面図・立面図)
- その後の増築・改修の確認記録(あれば)
これらが揃うと、
- 既存不適格の理由(いつ・どうルールが変わったか)
- 違反ではない根拠
を、言葉だけでなく書類で示せるようになります。
② 行政・建築士の「見解メモ」を作っておく
- 建築指導課で聞いた内容
- 建築士の診断結果
- 将来の建て替え・増改築時に予想される制限
を、簡単でよいのでメモにしておき、
不動産会社/買主に共有できる状態にしておくと、
“なんとなく不安”をかなり軽減できます。
③ ローンの目処を不動産会社と一緒に立てておく
- 「この銀行なら既存不適格でも前向きに見てくれる」
- 「この条件なら融資可能性あり(頭金○%以上など)」
といった情報を、不動産会社経由で整理しておけば、
- 購入検討者:「ローン大丈夫かな?」
- 営業側:「この銀行ならこういう条件で通っています」
と会話しやすくなり、成約ハードルが下がります。
専門家コメント
ホームワーク株式会社 代表取締役(既存不適格・問題物件担当)
- 既存不適格マンション・一棟アパート・戸建の売却・買取を多数サポート
- 建築士・金融機関・投資家ネットワークと連携し、個別事情に合わせた戦略立案に注力
コメント
「既存不適格という言葉だけが独り歩きして、
- 『うちの物件はもう売れないのではないか』
- 『子どもに迷惑をかけるから、どうしたらいいか分からない』
とご不安になっている方はとても多い印象です。
実務の感覚でいうと、
- 『違法建築』と『既存不適格』はまったく別物
- 既存不適格であっても、
きちんと説明・価格調整をすれば普通に売れている案件は多い
というのが現状です。
大事なのは、
- まず“違法かどうか”を建築・行政の視点で確認する
- 次に、“将来どんな制限があり得るか”を整理する
- そのうえで、“それを理解してくれる買主層”に向けて売る
という順番を踏むことです。
『既存不適格だからダメ』と一括りにせず、
一件一件の事情に合わせて“現実的な落としどころ”を一緒に探していければと思います。」
よくある質問(FAQ)
Q1. 既存不適格建築は、そもそも売却できますか?
A. 売却可能です。
違法建築ではないため、
- ローンを出す金融機関もありますし
- 一般のエンドユーザーに売れている事例も多くあります。
ただし、将来の建て替え・増改築の制限を踏まえ、
価格・説明内容に工夫が必要です。
Q2. 自分の建物が既存不適格かどうか、どうやって調べればいいですか?
A.
- 建築当時の確認図面・容積率・建ぺい率・高さ制限を確認
- 現在の用途地域・容積率・建ぺい率・高度地区などを調べる
- 建築士や行政(建築指導課)に「当時は適法か/今とのギャップは何か」を聞く
という流れが確実です。
不動産会社に相談すれば、この調査を手伝ってもらえることも多いです。
Q3. 既存不適格だと、住宅ローンは使えませんか?
A. 金融機関によります。
- 既存不適格でも融資OKな銀行
- 条件付き(自己資金多め等)で対応する銀行
- 原則NGの銀行
に分かれます。
不動産会社経由で「どの銀行なら検討余地があるか」を確認しておくとよいでしょう。
Q4. 既存不適格と違法建築の違いを、買主にどう説明すればいいですか?
A. 一例として、
「建てた当時のルールは守って建てた建物です。
その後、エリアの規制が厳しくなり、今の基準では少しオーバーしているため、
“既存不適格”という扱いになっています。
違法建築ではありませんが、将来建て替えるときには、
今と同じ規模では建てられない可能性があります。」
と、
「当時は適法」「今はルールが変わった」「将来の制限」をセットで
説明すると伝わりやすくなります。
Q5. 将来建て替える予定がなければ、既存不適格でもあまり気にしなくていいですか?
A. “自分が住んでいる間”だけで見れば、
大きな問題にならないことも多いです。
ただし、
- 将来の売却時
- 相続で子ども世代が処分するとき
には、
既存不適格であることが価格・売れ行きに影響する可能性があります。
Q6. 既存不適格の一棟アパートを持っています。売るべきか、持ち続けるべきか迷っています。
A. 判断のポイントは、
- 現在の賃料収入と将来の修繕費・空室リスク
- 建物の残存寿命(あと何年安心して貸せるか)
- 建て替えた場合に、現行基準でどんな規模・利回りになるか
です。
これらをキャッシュフロー表にして比較すると、
「今売る/もう少し持つ」の判断がしやすくなります。
Q7. 既存不適格だと、固定資産税や相続税評価が下がることはありますか?
A. 評価は主に土地の路線価・建物の構造・経過年数などで決まるため、
既存不適格だからといって自動的に税評価が下がるわけではありません。
ただし、市場価値が低いことを理由に、
売却価格を前提とした個別評価を使うケースもあり得ます(税理士と要相談)。
Q8. 売却前に、既存不適格を“直す”ことはできますか?
A. 容積率・建ぺい率・高さなどの基準を満たすように
減築・改修すれば「適法状態」に近づけることは可能です。
ただし、費用対効果の問題が大きいため、
- 工事費用
- 適法化による売却価格アップ幅
を比較し、採算が取れるかを検討する必要があります。
Q9. 不動産会社に相談するとき、「既存不適格」と伝えたら嫌がられませんか?
A. 訳あり物件に慣れていない会社だと、
慎重な反応をすることもあります。
一方、既存不適格や投資用・事業用物件に慣れた会社であれば、
- 想定買主層
- 想定価格レンジ
- 売り方の工夫(説明資料・ターゲット設定)
を一緒に考えてくれるはずです。
Q10. まず何から始めればいいですか?
A.
- 建築確認書類・図面・固定資産税明細など、建物に関する資料を一度整理する
- 建築士 or 行政(建築指導課)に、「既存不適格の有無・理由」を確認する
- その結果を持って、不動産会社に
- 売却の可否
- 想定価格
- 売り方(一般向け/投資家向け)
を相談する
という流れがおすすめです。
「既存不適格だから売れない」と決めつけず、
**“どの程度の不適格で、どんな条件なら売れるのか”**を
一緒に整理していきましょう。
千代田区で不動産売却をご検討の方へ
不動産売却は、
流れを理解したうえで進めることで
不安と失敗を大きく減らせます。
ホームワークでは、
千代田区の不動産売却について、
準備段階から引き渡しまで
一貫してサポートしています。
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