成年後見人が必要な不動産は売却できる?手続きと注意点を解説

注意

【結論】成年後見人がついた不動産も「売却は可能」だが、家庭裁判所の許可なく売るのはNG|時間と手続きを前提に計画することが重要

認知症や判断能力の低下により、
本人に成年後見人が選任されている不動産でも、

  • 条件を満たし、
  • 家庭裁判所の許可(不動産売却許可)が下りれば

売却することは可能です。

ただし、

  • 後見人が勝手に売却してはいけない
    (「本人の重要な財産」を処分するには裁判所の許可が必須)
  • 手続きには1〜2か月以上かかることが多く、
    「急いで売る」ことには向きにくい
  • 売却の目的・価格が「本人の利益になっているか」が、
    裁判所から厳しくチェックされる

といったポイントがあります。

この記事では、

  • 成年後見人が関わる不動産売却の基本ルール
  • 実際の手続きの流れ
  • よくトラブルになる注意点
  • 現実的な進め方・対処法

を整理して解説します。


目次

成年後見人が関わる不動産売却の基本ルール

成年後見人とは?

  • 判断能力が不十分な人(認知症・知的障がい・精神障がいなど)のために、
  • 家庭裁判所が選任する「財産管理と身上保護」を行う人(代理人)

です。

本人(被後見人)は、

  • 原則として「法律行為(契約など)」を自分では行えない
    → 不動産売却も、自分だけの意思ではできない
  • 成年後見人が代わりに行う
    → ただし、重要な財産の処分には家庭裁判所の許可がいる

というルールになっています。

不動産売却は「重要な財産の処分」にあたる

成年後見制度では、

  • 本人の居住用不動産(マイホーム・自宅)
  • その他の不動産(投資用・空き家・土地など)

は、いずれも原則として**「重要な財産」**と考えられます。

そのため、

成年後見人が不動産を売却する場合
家庭裁判所の許可が必須

と考えておくべきです。

(細かくは、
居住用か否かで条文の位置づけが異なりますが、
実務的には「どちらも許可を取る」と思っておいて差し支えありません)


成年後見人が不動産を売却する「主なケース」

成年後見人が関わる不動産売却には、主に次のようなパターンがあります。

  • 本人が住んでいた持ち家を売る(施設入所・住み替えなど)
  • 相続で取得したが、本人自身は使わない空き家・土地を売る
  • 収益物件・投資用不動産を整理して、
    本人の生活費・医療費の資金に充てる
  • 共有名義の不動産を整理し、トラブルやコストを減らす

いずれの場合も、家庭裁判所は次の点を重視します。

  • 売却の目的:
    → 本人の生活・療養・介護・安全のためか
  • 売却価格:
    → 相場から大きく外れていないか
  • 売却方法:
    → 公平・透明な手続きを踏んでいるか(複数社査定など)

成年後見人が不動産を売却する流れ(6ステップ)

ステップ① 売却の必要性・目的を整理する

まず、成年後見人として、

  • なぜ今、不動産を売る必要があるのか
  • 売却しないと困る(または、売却した方が明らかに本人にとって良い)理由
  • 売却代金をどのように本人のために使うのか(生活費・施設費用など)

を文章にして整理します。

これは後で家庭裁判所に提出する
「許可申立書」の骨格になります。

ステップ② 不動産会社へ査定を依頼し、相場を把握する

次に、不動産会社へ査定を依頼します。

  • 成年後見案件に理解のある会社を選ぶとスムーズ
  • 1社だけでなく、2〜3社の査定を取ると裁判所への説明がしやすい

この段階で、

  • 想定売却価格のレンジ
  • 物件の長所・短所
  • 売却方法(一般仲介・買取など)とそれぞれのメリット・デメリット

を把握しておきます。

※まだこの時点では、売却活動自体は開始しません。

ステップ③ 家庭裁判所に「不動産売却の許可申立て」を行う

必要資料の例(実務上よく求められるもの):

  • 不動産売却許可申立書
  • 登記事項証明書(全部事項)
  • 固定資産税評価証明書
  • 不動産会社の査定書(複数社あるとより良い)
  • 売却の必要性や理由を説明する書面
  • 本人の生活状況・収支状況が分かる資料(年金額・施設費用など)
  • 売却後の資金使途のイメージ(生活費、介護費等)

家庭裁判所は、

  • 書面審査+必要に応じて面談・照会
  • 不動産売却の必要性と価格の妥当性

をチェックしたうえで、許可・不許可を判断します。

目安としては、

  • 申立てから1〜2か月程度で判断が出ることが多い
    (裁判所・案件内容によって前後)

ステップ④ 裁判所の許可が出たら、正式に売却活動を開始

許可決定(審判書)が出たら、
その範囲内で正式に売却活動を始めます。

  • 不動産会社と媒介契約を締結
  • 広告・ポータル掲載・内覧対応
  • 条件交渉・買主選定

この過程で、

  • 想定より高く売れそうな場合:
    → 本人にとって有利なので問題なし
  • 想定より大きく安い価格でしか決まらない場合:
    → 価格次第では、再度裁判所への報告・相談が必要になる場合もあります。

(たとえば、
査定4,000万円台 → 実際の成約が3,000万円を大きく割るようなケースなど)

ステップ⑤ 売買契約・決済・引き渡し

買主が決まったら、

  • 売買契約書・重要事項説明書の内容を確認
  • 成年後見人が売主として契約書に署名・押印
  • 決済日には、残代金受領・登記・鍵の引き渡しを行う

※裁判所の許可決定書(審判書)は、
司法書士・金融機関・買主側にも提示します。
これにより、「正当な手続きで売却していること」が証明されます。

ステップ⑥ 売却結果と資金管理について、家庭裁判所へ報告

成年後見人は、
通常の財産管理と同様に、

  • 売却額
  • 費用(仲介手数料・税金など)
  • 残った資金をどのように管理・運用しているか

を、家庭裁判所へ定期報告する必要があります。

売却代金は、

  • 本人名義の口座で管理し
  • 本人の生活費・医療費・介護費などに充てる

のが原則です。


成年後見人による不動産売却で「特に注意すべきポイント」

注意点① 「家族の都合」ではなく「本人の利益」が最優先

  • 子ども世代が「早く現金化して相続対策をしたい」
  • 同居家族が「自分たちのマイホーム資金にしたい」

といった家族側の都合だけでの売却は、
家庭裁判所から認められません。

問われるのはあくまでも、

「売却が本人の生活・療養・安全のために必要か」
「売却しない場合、どんな不利益があるか」

です。

注意点②「相場より安すぎる売却」は厳しくチェックされる

  • 極端な値下げ
  • 特定の親族・関係者への“横流し”的な売却
  • 売却価格の根拠があいまい

は、成年後見人の「善管注意義務」違反と評価されるおそれがあります。

そのため、

  • 不動産会社の査定書(できれば複数)
  • 近隣の成約・売出事例
  • 売却過程(何件の問い合わせ・内覧があったか/なぜこの価格に決まったか)

を整えておくことが大事です。

注意点③ 売却までにかかる「時間」を見込んでおく

  • 裁判所への許可申立て(1〜2か月程度)
  • 売却活動期間(数か月)
  • 決済・引き渡し

と考えると、
トータルで半年〜1年程度かかることも珍しくありません。

「数か月後に施設入所費用が一気に必要」など、
資金需要が差し迫っている場合は、

  • 事前に預貯金・他資産とのバランスを見ながら
  • 売却時期や優先順位を組み立てる

ことが重要です。

注意点④ 共有名義・相続人が絡む場合はさらに複雑

  • 被後見人が共有者の一人に過ぎない
  • 相続人の一部が成年後見人を付けている
  • 複数の後見人・保佐人・補助人が絡む

といったケースでは、

  • 必要な同意者が誰か
  • 誰が窓口となって売却を進めるか

を整理するだけでも難しくなります。

このような場合は、

  • 家庭裁判所の書記官・担当裁判官への事前相談
  • 司法書士・弁護士・不動産会社との連携

がほぼ必須です。


成年後見人が関わる売却の「現実的な進め方」

① まずは「後見人制度の専門家+不動産会社」に両方相談する

  • 成年後見に詳しい司法書士・弁護士
  • 成年後見案件の実績がある不動産会社

この「2つの窓口」を押さえておくと、話が早いです。

順序としては、

  1. 現状の登記・後見状況を司法書士や弁護士に確認
  2. 並行して不動産会社に査定を依頼し、
    「売った場合どれくらいになるか」を把握
  3. それらの情報をもとに、家庭裁判所への申立て内容を固める

という流れが現実的です。

② 家族だけで「勝手に話を進めない」

  • 「とりあえず親戚に安く売っておいて、後から裁判所に説明すればいい」
  • 「名義を移しておいてから売れば、後見手続きはいらないのでは?」

といった動きは、
後から法的な問題になりやすく、
最悪の場合、

  • 売買契約の無効・取消し
  • 成年後見人(または家族)への損害賠償請求

につながるリスクがあります。

必ず、

「後見人として何ができて、何をしてはいけないか」

を、専門家+家庭裁判所の見解を踏まえて確認したうえで進めましょう。

③ 売却だけでなく「賃貸・活用」の選択肢も検討する

  • 必ずしも売却がベストとは限らない
  • 一時的に賃貸に出して収益を得る
  • 一部だけを処分し、残りは維持する

など、本人の利益を最大化する方法は売却以外にもありえます。

不動産会社には、

  • 売った場合の手取り・税金
  • 貸した場合の収支(家賃・管理コスト)

の両方のシミュレーションを依頼し、
比較検討すると判断しやすくなります。


専門家コメント

ホームワーク株式会社 代表取締役(不動産売買・相続・高齢者サポート担当)

  • 成年後見人が関わる不動産売却・相続不動産の売却を多数サポート
  • 司法書士・弁護士・税理士と連携したワンストップ対応に注力

コメント

「成年後見人が付いている不動産の売却は、
一般的な売却と比べて、

  • 手続きが増える
  • 時間がかかる
  • 価格の妥当性に対するチェックが厳しい

という特徴があります。

一方で、

  • 施設入所費や介護費用の確保
  • 空き家・遊休不動産のリスク軽減
  • 本人の生活の質を守る

といった観点から、
『売らないリスク』の方が大きいケースも少なくありません。

大切なのは、

  1. 『家族の都合』と『本人の利益』をきちんと切り分けること
  2. 裁判所・司法書士・不動産会社と連携しながら、
    手続きを正面からきちんと踏むこと

だと感じています。

『後見人がついてしまったから、もう何もできない』
とあきらめる必要はありません。
ただし、自己判断だけで動くのではなく、
必ず専門家と一緒に進めていただきたい領域です。」


よくある質問(FAQ)

Q1. 成年後見人がついている不動産は、本当に売却できますか?
A. 条件を満たせば売却可能です。
ただし、原則として家庭裁判所の許可が必要であり、
売却目的や価格が「本人の利益になっているか」が厳しくチェックされます。

Q2. 家庭裁判所の許可を取らずに売ってしまったらどうなりますか?
A. 後から

  • 売買契約の無効・取消し
  • 成年後見人(や関係者)への損害賠償請求

などのリスクが生じます。
また、後見人としての責任(善管注意義務違反)を問われる可能性もあります。

Q3. 成年後見人は、親族に安く不動産を売ることはできますか?
A. 原則として非常に慎重な判断が求められます。
親族への安値売却は「本人の財産を不当に減らす行為」と見なされやすく、
家庭裁判所から許可が下りない可能性が高いです。

Q4. 家族が所有権移転を先にしてから売れば、後見手続きは不要ですか?
A. 被後見人の財産を家族の名義に移してから売る、というやり方は、
後見制度の趣旨に反し、法的問題を生む可能性があります。
贈与・名義変更自体にも裁判所の許可が必要になり得ますので、
自己判断で行うのは危険です。

Q5. 裁判所への申立てから売却まで、どのくらい時間がかかりますか?
A. 目安として、

  • 許可申立て〜裁判所の判断:1〜2か月程度
  • その後の売却活動:数か月

と考えると、半年〜1年程度を見込んでおくと安心です。
物件条件・市場状況によって短縮・延長があります。

Q6. 成年後見人がついていても、本人の名義で売買契約書に署名させればいいですか?
A. NGです。
被後見人は「単独で有効な法律行為ができない」前提で、
成年後見人が代理人として契約を行います。
形式だけ本人にサインさせる方法は、
無効・取消しのリスクが非常に高く危険です。

Q7. 先に不動産会社と媒介契約を結んでおいて、後から裁判所の許可を取ることはできますか?
A. 実務上、

  • 「査定・相談」までは許可前でも行われることが多い
  • 媒介契約の締結・広告開始については、
    事前に裁判所や後見人の担当専門家と相談するのが安全

です。
売買契約(買主との契約)は、許可決定後に行うのが原則です。

Q8. 売却代金は、家族が自由に使えますか?
A. いいえ。
売却代金は本人の財産であり、成年後見人が管理し、
本人の生活・療養・介護のために使用します。
家族の生活費・事業資金などに流用することはできません。

Q9. 成年後見制度ではなく「家族信託」の方が売却しやすいと聞きましたが本当ですか?
A. 家族信託は、判断能力が低下する「前」に信託契約を結んでおくことで、
将来の柔軟な財産管理・売却を可能にする制度です。
すでに判断能力が低下している方には使えませんが、
これからの対策としては有力な選択肢のひとつです。

Q10. まず何から始めればいいですか?
A.

  1. 不動産の内容(所在地・登記・評価額)と、本人の生活状況を整理する
  2. 成年後見人(あなた自身 or 他の方)が誰かを確認し、その方と意思疎通を図る
  3. 成年後見に詳しい司法書士・弁護士、不動産会社に
    「売却が必要かどうか」「どのような手続きが必要か」を相談する

という流れがおすすめです。
「売る」と決め切る前でも、**“選択肢を知るための相談”**から始めて問題ありません。

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