【結論】「賃借人付き=売れない」ではないが、“誰に・どんな条件で売るか”を設計しないと失敗しやすい
賃借人(入居者)の権利が強い物件――
たとえば、
- 借地借家法の適用を受ける長期入居の居住用賃貸
- 家賃が相場より低く、更新を重ねている部屋
- 立退きが難しい店舗・事務所付きの物件
などは、
- 「入居者がいるからこそ価値がある」と見る投資家
- 「自分で住めないから買いづらい」と感じる実需の購入希望者
がハッキリ分かれる“クセの強い物件”です。
オーナー側から見ると、
- 「立退きできないなら、もう売れないのでは?」
- 「家賃が安すぎて、投資家にも見向きされないのでは?」
- 「契約内容が昔のままで、自分でも把握しきれていない」
と不安になりがちですが、
実務の現場では、
- 売り方のターゲット(誰に売るか)
- 契約内容・リスクの見える化
- 必要に応じた賃料・条件の見直し
をきちんと設計すれば、「十分に売れる」ケースも多くあります。
逆に、
- 賃借人の権利を軽く見て、立退き前提で売ろうとする
- リスクや制約をあいまいにしたまま一般の実需層に売ろうとする
と、
- 売却が長期化する
- 値下げを重ねた末に、結局投資家向けに安く売ることになる
- 最悪、トラブルの火種を抱えたまま売買してしまう
といった失敗につながりかねません。
以下では、
- 「賃借人の権利が強い物件」がなぜ売りにくく見えるのか
- 実際にどういう売却パターンが現実的なのか
- リフォーム・不動産再生を手がけるホームワーク株式会社の現場事例
をもとに、オーナーが知っておくべき現実と、取るべき戦略を整理します。
賃借人の権利が強い物件とは何か
借地借家法で保護される「居住用・事業用」の賃貸
日本では、居住用・事業用の建物賃貸借は、
基本的に「借地借家法」に守られています。
主なポイントは、
- 正当事由がない限り、貸主から一方的に解約・更新拒絶はできない
- 長期入居・家賃の継続支払い・地域の事情なども「正当事由」の判断材料
- 立退きには、多額の立退料が必要になるケースもある
という点です。
つまり、
- オーナーが売却を理由に「出て行ってください」と言っても、
賃借人が「出ない」と言えば、そう簡単に出て行ってもらえない
これが「賃借人の権利が強い」といわれる背景です。
売却しても賃貸借契約はそのまま引き継がれる
不動産を売却すると、
- 所有者(オーナー)は変わる
- しかし賃貸借契約は基本的にそのまま存続し、新オーナーに引き継がれる
というのが原則です(法律上の「物権変動」と「賃借権」の関係)。
そのため、
- 「自分で住みたい」買主
- 「自由な条件で使いたい」買主
にとっては、
「賃借人付きの物件」はそもそも検討の対象外になりやすい一方で、
- 「安定した家賃収入を狙う投資家」にとっては、
「最初から家賃が入っている収益物件」として魅力がある
ともいえます。
なぜ「賃借人の権利が強い物件=売れにくい」と見られるのか
理由1:買主の“自由度”が低い
- 自分で住みたい
- 好きなようにリフォームしたい
- 事務所や店舗として使いたい
といったニーズには、
- 入居者が退去しない限り対応できない
- 立退き交渉は時間・コスト・リスクが大きい
という制約があるため、
- 実需の購入希望者(自分で住む人) → 選択肢から外れがち
- 使途が限定される → 市場での買い手の層が狭くなる
というハンデが生じます。
理由2:家賃が相場より低いまま長期化しているケースが多い
- 長年の入居者に値上げ交渉をしてこなかった
- 昔の相場のままの家賃で更新を繰り返している
といった物件では、
- 表面利回りが低い
- 将来の賃料アップも期待しにくい
ため、投資家から見ても「妙味が薄い」と判断されやすくなります。
理由3:契約書・更新履歴・敷金などの情報が整理されていない
現場でよくあるのが、
- 昔の契約書が見つからない
- 更新契約書を作らず、口頭・家賃の振込だけで更新してきた
- 敷金・保証金の扱いがあいまい
といった状況です。
買主からすると、
- 法的にどこまで保護されている賃借人なのか
- 賃料改定や解約の余地がどこまであるのか
- 敷金精算のリスクはいくらか
が見えないため、
「よく分からないリスクがあるならやめておこう」となりやすくなります。
「賃借人付き物件」の主な売却パターン
賃借人の権利が強い物件でも、
売り方を整理すれば、現実的な出口は大きく3つに分かれます。
パターン①:そのまま「収益物件」として投資家に売る
もっともオーソドックスなのが、
賃借人・賃貸借契約をそのまま引き継ぐ形で「収益物件」として売却する方法です。
【特徴】
- 退去交渉をしないため、賃借人との関係を崩さずに済む
- 「家賃収入=利回り」を重視する投資家が主な買い手
- 所有権移転後も賃貸借条件を維持するのが前提
【ポイント】
- 現行家賃/周辺相場/利回りの整理
- 契約内容(契約期間・更新・解約条件)の明確化
- 修繕履歴・今後必要な修繕コストの見える化
が重要になります。
【向いているケース】
- 現行家賃が極端に相場から外れていない
- 建物の状態が大きく悪くない
- 契約関係の書面が残っている(または整理できる)
パターン②:立退き・合意解約を前提に「空室」として売る
オーナー側で先に立退き交渉をして、
- 一定の立退料を支払う
- 退去時期・条件を合意書にまとめる
ことで、「空室」として売るパターンです。
【特徴】
- 自己居住・リフォーム前提の買主も検討対象にできる
- 市場の買い手層が広がるため、売却価格が上がる可能性もある
- その分、立退料や時間的コストをオーナーが負担する必要あり
【注意点】
- 「立退き理由」と「立退料の水準」によって、交渉の難易度は大きく変わる
- 無理な立退き圧力はトラブル・訴訟リスクに直結する
- 合意が得られないと、売却計画そのものが行き詰まる可能性もある
【向いているケース】
- かなり好立地で、空室にすれば実需で高く売れる見込みが高い
- 立退料を含めても、トータルでプラスになる数字が見込める
- 賃借人との関係性が悪くなく、話し合いの余地がある
パターン③:リフォーム・コンバージョン+投資家or自社買取再販
ホームワーク株式会社のようなリフォーム・再生を得意とする会社や
買取再販業者が、
- 入居中の状態 or 退去後に一度物件を買取り
- 必要に応じてリフォーム・用途変更(コンバージョン)
- その後、賃貸 or 売却する
というパターンです。
【特徴】
- オーナーは「早期現金化」ができ、賃借人との複雑な交渉から離れられる
- 再生リスク・空室リスク・工事リスクは買取側が負う
- その分、相場よりは低めの買取価格になるのが一般的
【向いているケース】
- オーナー自身で立退き交渉・リフォーム判断をする余力がない
- 長期保有するつもりがなく、「できるだけ早くスッキリさせたい」
- 契約関係が複雑で、専門家の再設計が必要そうな物件
実例で見る:賃借人の権利が強い物件はこうして売れた
※プライバシー保護のため、一部内容を加工しています。
事例①:20年以上同じ入居者の居住用マンション(都内)
- 状況
- 都内・駅徒歩5分のワンルーム
- 20年以上同じ単身者が入居、家賃は相場より2割ほど安い
- 更新契約書は途中から作成しておらず、口頭更新
【課題】
- オーナー:「立退きは現実的に難しい。相続も近いので整理したい」
- 投資家から見ると、
- 家賃は安いが、長期入居で空室リスクは低い
- ただし契約関係があいまいで、法的リスクが読みにくい
【ホームワーク株式会社の対応】
- 賃借人にヒアリングし、入居期間・これまでの更新経緯を整理
- 過去のやりとり・家賃振込履歴から「事実上の契約条件」を明文化
- 司法書士・宅建士と連携し、
「現状の権利関係」を説明した資料を作成 - 投資家向けに、
- 今後10年程度の想定キャッシュフロー
- 将来の大規模修繕コストの見通し
をまとめて提示
【結果】
- 自己居住希望層ではなく、
「長期安定収入を重視する個人投資家」にターゲットを絞って販売 - 表面利回りは高くないものの、空室リスクの低さを評価され、
オーナーの想定に近い価格で成約 - 賃借人も条件変更なし・オーナー変更のみで、平穏なまま契約継続
事例②:家賃が半分近くまで下がっていた古い一棟アパート(郊外)
- 状況
- 郊外の木造アパート(築40年以上)
- 長期入居者が多く、家賃は近隣相場の半分〜3分の1レベル
- 数部屋は空室・雨漏りも発生
【課題】
- 現行家賃水準では、
- 利回りが低すぎて投資家には魅力が薄い
- 修繕コストをかけても回収が難しい
- かといって、即時の大幅家賃アップは現実的に不可能
【対応】
- 建物調査のうえ、
- 「残せる部分」と「構造的に限界な部分」を切り分け
- 「解体+更地売却」「一部減築+リノベ」「一棟丸ごと再生」
の3パターンで収支シミュレーション - オーナーは「自分で再生する選択肢」は取らず、
ホームワーク株式会社による買取再生案を選択
【結果】
- オーナーは、
- 現状に即した価格で早期買取り → 管理・修繕の負担から解放
- ホームワーク株式会社側で、
- 一部解体+間取り変更+大規模リノベ
- 新家賃水準で再募集
- 将来的には再販も視野に入れた再生を実施
→ 個人オーナーではとても踏み出しにくい再生投資を、
専門会社が引き継ぐことで、「売れない老朽物件」を市場に戻したケース。
オーナーが「今すぐ確認すべき」チェックポイント
賃借人の権利が強い物件をお持ちなら、
まず次のポイントをチェックしてみてください。
契約・権利関係
- 最新の賃貸借契約書は手元にあるか
- 更新契約書は作っているか(いつから作っていないか)
- 敷金・保証金の額と、返還条件は明確か
- サブリース(転貸)など、第三者が絡む契約になっていないか
賃料・収支
- 現行家賃は、周辺相場と比べてどの程度の水準か
- 修繕・管理費を差し引いた「実質利回り」はどれくらいか
- 将来必要になりそうな大規模修繕(屋根・外壁・設備など)の見通しはあるか
建物の状態
- 共用部・外観の老朽化具合(クラック・サビ・雨漏りなど)
- 室内設備(給湯器・水回り・エアコン等)の寿命
- 耐震性・安全性に不安はないか
これらを整理したうえで、
- 「そのまま投資家に売る」のが合理的なのか
- 「立退きや再生を前提にした売り方」の方が得なのか
- 「自社・専門会社による買取再生」が適しているのか
を検討していくことになります。
専門家コメント(ホームワーク株式会社)
ホームワーク株式会社
(賃貸物件の再生・買取再販を多数手がけるリフォーム会社)
「賃借人の権利が強い物件のご相談で、
オーナー様からよく出てくる言葉は
- 『入居者さんには長く住んでもらっているので、大事にしたい』
- 『でも、このままでは自分たちの老後や相続が不安』
という“板挟みのお気持ち”です。
私たちが大切にしているのは、
- 賃借人を一方的に悪者にしないこと
- オーナーの事情だけでなく、入居者の生活も踏まえたうえで、
どういう形なら“みんなが納得できる出口”になるかを一緒に考えること
です。
そのためには、
- まず現状の賃貸借関係・建物状態・収支をできるだけ正確に“見える化”する
- 売却・立退き・再生・買取など、複数のパターンを“数字”で比較する
- オーナー様の時間軸(いつまでにどうしたいか)も踏まえて、
無理のないプランを選ぶ
というプロセスが欠かせません。
『賃借人の権利が強いから、もう売れない』とあきらめる必要はありません。
大事なのは、“普通の売却”と同じ感覚で考えないことと、
早めに専門家を交えて選択肢を整理することです。
契約書が古い/家賃が安い/建物が古い――
そういったややこしさも含めて、
どう整理すればオーナー様にとってベストに近づけるか、
一緒に考えていければと思います。」
よくある質問(FAQ)
Q1. 入居中でも物件は売れますか?
A. 売れます。日本では「オーナーチェンジ物件」として、
賃貸中のまま投資家に売却されるケースは多数あります。
ただし、買主のターゲットが投資家中心になるため、
価格や利回りの設計が重要です。
Q2. 売却を理由に、こちらから賃借人を退去させることはできますか?
A. 「売るから出ていってください」だけでは、
借地借家法上の「正当事由」としては弱く、
賃借人が拒否すれば強制は困難です。
立退きには、合理的な理由と相応の立退料、丁寧な交渉が必要になります。
Q3. 家賃が相場よりかなり安いです。値上げしてから売ったほうがいいですか?
A. 一概には言えません。
- 無理な賃料改定交渉は、関係悪化・トラブルの原因になります。
- 売却までの時間軸や、賃借人との関係性を踏まえ、
値上げの是非・タイミングを慎重に検討する必要があります。
場合によっては、「安い家賃=長期安定」の価値として、
そのまま投資家に売った方がスムーズなこともあります。
Q4. 古い契約書しかなく、更新契約も作っていません。売れますか?
A. 「売れる/売れない」でいえば売れますが、
リスクが読みづらく、価格面で不利になる可能性があります。
まずは契約実態を整理し、
- 入居期間
- 家賃の変遷
- これまでの口頭合意内容
などをまとめたうえで、
必要ならば現状に即した再契約や覚書の作成を検討するとよいでしょう。
Q5. 立退き交渉をしてから売るべきでしょうか?
A. 立退き交渉はハイリスク・ハイリターンです。
- 好立地で、空室にすれば大きく価値が上がる
- 立退料を含めてもプラスになる可能性が高い
- 交渉に時間と手間をかけられる
場合は検討の余地がありますが、
そうでない場合は、賃借人付きのまま投資家に売るほうが
現実的なことも多いです。
Q6. 自分で再生するか、買取に出すか迷っています。どう決めればよいですか?
A. 次の3点を比較するのがおすすめです。
- 自分でリフォーム・再生した場合の投資額と想定回収額
- そのまま投資家に売った場合の手取り
- 買取再生業者に売った場合の手取り・スピード
これらを数字で並べることで、
「リスクと時間を取ってもリターンを狙うか」
「ある程度割り切って早期に整理するか」
の判断がしやすくなります。
Q7. サブリース(一括借り上げ)契約中でも売却できますか?
A. 可能です。ただし、
- サブリース契約の内容(期間・賃料・解約条件)
- 将来的な賃料改定条項
などを買主に引き継ぐことになるため、
契約の中身をよく整理し、リスクを説明できるようにしておく必要があります。
Q8. まず何から相談すればいいでしょうか?
A. 次の情報が分かれば、初回相談には十分です。
- 物件の所在地・種類(区分マンション/一棟/戸建て+賃貸部分など)
- 賃借人の入居期間と現在の家賃
- 手元にある契約書の有無・内容の大まかな状況
これをもとに、
- 売却ターゲット(投資家・実需)の見立て
- 想定売却価格のレンジ
- リフォーム・立退き・買取などの選択肢
を、ホームワーク株式会社や提携専門家と一緒に整理していくことができます。
「賃借人の権利が強い物件だから…」と動けずにいる期間が長いほど、
建物の老朽化や相続問題が重なり、状況は複雑になりがちです。
気になった段階で、まずは現状把握から始めてみてください。
千代田区で不動産売却をご検討の方へ
不動産売却は、
流れを理解したうえで進めることで
不安と失敗を大きく減らせます。
ホームワークでは、
千代田区の不動産売却について、
準備段階から引き渡しまで
一貫してサポートしています。【お問い合わせ窓口】
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