古い賃貸借契約が残る物件、売却が難しい理由とは

電卓

【結論】「古い契約」が残る物件は、“条件が読めない・変えにくい”から買主が慎重になる。まずは中身の「見える化」が必須

古い賃貸借契約が残っている物件は、

  • 入居者は長く住んでくれている
  • 家賃もちゃんと入ってきている

一見「安定した良い物件」のように見えます。

しかし、いざ売却しようとすると、

  • 投資家から「リスクが読めない」と警戒される
  • 実需(自分で住みたい人)はそもそも候補にしづらい
  • 金額を下げてもなかなか決まらない

といった“売りづらさ”が表面化しがちです。

その原因の多くは、

  • 古い契約書の条件が今の法律・相場とかみ合っていない
  • 年月の中で「口頭の約束」だけが積み重なり、書面が追いついていない
  • オーナー自身も、正確な権利関係を把握しきれていない

という「契約の不透明さ」にあります。

売却を成功させるためには、

  1. 古い賃貸借契約の「内容」と「履歴」を整理して見える化する
  2. そのうえで、「そのまま引き継いで良い買主」を明確にする
  3. 必要に応じて、覚書・再契約・条件調整などで“今の時代用”に整える

といったステップが欠かせません。

以下では、リフォーム・賃貸再生を多数手がけるホームワーク株式会社の現場感覚もふまえながら、

  • なぜ古い賃貸借契約が売却を難しくするのか
  • オーナーが事前に整理しておくべきポイント
  • 実際にどう整え、どう売っていくべきか

を解説します。


目次

古い賃貸借契約が売却を難しくする主な理由

理由① 契約内容が「今の法律・実務」とずれている

10年、20年前に結んだ契約書には、

  • 法改正前の条文や表現
  • 現在は好まれない一方的な条項
  • 曖昧な解約・更新・原状回復の定め

が、そのまま残っているケースがよくあります。

買主(特に投資家)からすると、

  • 解約・更新・明渡しの条件が、法的に見てどうなのか
  • 後から「その条文は無効」と主張されるリスクがないか
  • 原状回復トラブルで、余計な費用負担が発生しないか

が読みづらく、慎重にならざるを得ません。

「昔はこれで普通だった」は、
今の売買市場では通用しづらいのが現実です。

理由② 更新・家賃変更が「口頭」で積み重なっている

現場で非常に多いパターンがこれです。

  • 契約当初だけ書面を交わし、その後の更新契約書は作っていない
  • 家賃の増減や駐車場の追加・解約などを口頭でやり取りしてきた
  • 賃借人との信頼関係で長年回してきた結果、書類が追いついていない

オーナーにとっては「お互いよく分かっている関係」でも、
第三者である買主にとっては、

  • 何が正式な合意事項なのか
  • 過去にどんな約束をしているのか

が不明瞭な状態です。

この「見えないリスク」を嫌って、

  • 金額をかなりディスカウントしないと買ってもらえない
  • 金融機関の融資評価も厳しくなる

といった結果を招きがちです。

理由③ 家賃が相場から大きく外れている(安すぎる・高すぎる)

長期入居でよくあるのが、

  • 当初の相場のまま家賃を据え置き → 現在の相場よりかなり安い
  • バブル期や好況期の水準がそのまま → 現在の相場より高すぎる

というケースです。

家賃が安すぎる場合:

  • 利回りが出づらく、投資家にとって魅力が薄い
  • 将来の値上げ交渉は、関係性・法律面からもハードルが高い

家賃が高すぎる場合:

  • 今後の更新や入れ替わりのタイミングで、
    大きく家賃を下げざるを得ない可能性がある
  • 将来キャッシュフローが悪化するリスクを、買主が警戒する

つまり、「現在の家賃水準」と「周辺相場」、「今後の修正可能性」を整理せずに売りに出すと、

  • 表面利回りだけでは判断できない“不透明物件”扱いになりやすい

のです。

理由④ 敷金・保証金・原状回復のルールが曖昧

古い契約書では、

  • 「原状回復の範囲」があいまい
  • 「経年劣化」と「借主負担」の区別が不明確
  • 敷金や保証金の扱い(償却・返還条件)がはっきりしない

といったケースが多く見られます。

買主側からすると、

  • 将来の退去時に、いくら原状回復費を負担することになるか
  • 敷金からどこまで充当できるのか
  • 借主とのトラブルに発展しないか

が読めず、「隠れた将来負債」のように感じられてしまいます。


売却前にオーナーが必ず整理しておくべきポイント

古い賃貸借契約が残る物件を売る前に、
最低限、次の3つは整理しておくべきです。

1. 契約書・更新履歴・現在の合意内容の「棚卸し」

  • 最初の賃貸借契約書(原本・コピー)
  • その後の更新契約書・覚書・追加契約
  • 家賃が変わったタイミングと、その理由
  • 駐車場・倉庫など付随契約があるかどうか

これらを時系列で整理し、

  • 現在有効な「契約条件」を一枚の紙にまとめておく

ことが重要です。

【ポイント】

  • 書面がない「口頭合意」がある場合は、
    • いつ頃
    • どんな趣旨で
    • お互いどう理解しているか
      をメモレベルでも構わないので整理しておくと、
      後で専門家が形にしやすくなります。

2. 現在の家賃・共益費と周辺相場の比較

  • 現在の月額家賃・共益費・駐車場代
  • 周辺の同種物件(築年数・広さ・立地が近いもの)の賃料相場
  • 過去10年ほどの賃料推移(上げた/下げたタイミングがあればその理由)

これを整理することで、

  • 現行家賃が「市場から見てどうか」
  • 将来の家賃見直しの余地があるのか/ほとんどないのか

の感触がつかめます。

買主に対しても、

  • 「安いけれど、その分長期入居で安定しています」
  • 「やや高めですが、◯年後の入れ替え時に相場へ調整する想定です」

といった説明ができるかどうかで、評価は大きく変わります。

3. 建物状態・修繕履歴・今後の修繕見通し

  • 過去に行った主な修繕(屋根・外壁・防水・設備など)の記録
  • 現在の劣化状況(外観・共用部・専有部)
  • 近い将来に必要になりそうな工事の見込み

これらが整理されていれば、

  • 買主は「将来の出費」をある程度織り込んで検討できる
  • 逆に何も分からないと、最悪パターンを想定して評価を下げる

という差が出ます。


「古い契約のまま」売る場合と、「整えてから」売る場合の違い

そのまま引き継いで売る場合(ミニマム対応)

【メリット】

  • 契約内容を大きくいじらないため、賃借人との関係が変わりにくい
  • オーナー側の手間・初期コストが少ない

【デメリット】

  • 買主のターゲットが「リスクを許容できる投資家」に限られる
  • 契約の不透明さを理由に、価格交渉で不利になりやすい

【向いているケース】

  • そこまで大きな歪みがない(家賃水準や契約条件が極端におかしくない)
  • 物件価格自体がそれほど高額ではない
  • 入居者との関係性を最優先したい

覚書・再契約などで「今の時代用」に整えてから売る場合

【メリット】

  • 契約内容が明瞭になり、買主・金融機関からの評価が上がりやすい
  • 将来のトラブルリスクをある程度“前倒しで処理”できる

【デメリット】

  • 賃借人との協議が必要で、時間と手間がかかる
  • 再契約の内容によっては、拒否・難色を示される可能性もある

【向いているケース】

  • 物件規模が大きく、きちんと整えることで価格・評価に与える影響が大きい
  • 契約の曖昧さがあまりに大きく、このままでは売却が難しいと判断される
  • 賃借人とコミュニケーションが取れており、協力してもらえる可能性がある

ホームワーク株式会社が見た「古い契約が足を引っ張った」実例

※プライバシー保護のため、一部内容を加工しています。

事例①:20年以上契約書なしで更新してきたマンション一室(都内)

  • 状況
    • 当初1年契約の書面はあるが、その後20年以上更新契約書なし
    • 家賃は当時のまま。相場より約3割安い
    • オーナー:「高齢で管理が不安。売って整理したい」

【問題点】

  • 法的には「期間の定めのない賃貸借」と解釈される可能性
  • 解約や家賃交渉の余地が、実務上かなり小さい
  • 投資家から見て、「とても長く出て行かなさそう・家賃も上がりにくい」物件

【対応】

  1. 賃借人に事情を丁寧に説明し、
    • 現在の条件を明文化する「確認書」
    • 将来の原状回復・解約時期に関する最低限のルール
      を覚書として取り交わし
  2. そのうえで、
    • 「長期安定入居者付き・家賃は安いが空室リスク小」
      として投資家向けに販売

【結果】

  • 実需層には向かないが、
    長期安定を重視する個人投資家に買い手がつき、
    オーナーの想定範囲で成約
  • 「最低限の整備+ターゲット選定」で、古い契約の不透明さを吸収したケース

事例②:古い一棟アパートで、契約ごとに条件がバラバラ(郊外)

  • 状況
    • 8世帯中、契約書の書式も条件もバラバラ
    • 礼金・敷金ゼロの部屋、敷金3ヶ月の部屋、家賃もまちまち
    • 原状回復の取り決めも部屋によって違う

【問題点】

  • 将来の退去・リフォーム・賃料見直しを、
    部屋ごとに判断せざるを得ない
  • 一棟としての収支予測が立てにくく、投資家が敬遠しがち

【対応】

  1. 各契約の内容を一覧表にして「現状把握シート」を作成
  2. 法律的に問題のある表現や、明らかに現実と合っていない条項を洗い出し
  3. 再契約や一斉見直しは行わず、
    • 「今後入れ替わる部屋から順次、新しい標準契約に切り替えていく」
      という方針を整理
  4. その「計画」自体を投資家に提示し、
    • 「現状こうだが、◯年かけてこう整えていくと、この収支になります」
      という形で販売

【結果】

  • すべてを完璧に整えてから売るのではなく、
    「整え方の筋道」を示したことで、
    再生型の投資家からの関心が高まり、
    想定を上回る条件で売却に成功

リフォーム会社が関わる意味:建物だけでなく「契約と収支」もセットで見る

ホームワーク株式会社のようなリフォーム会社が、
古い賃貸借契約が残る物件に関わるとき、
単に室内や共用部を直すだけではありません。

  • 建物の現状 → どこまで手を入れれば、何年持つのか
  • 家賃水準 → リフォーム後、どこまで家賃を上げられる可能性があるか
  • コスト → 工事費、将来の修繕費、空室期間のリスク

これらをまとめて、

  • 「この条件のまま売るとこう」
  • 「ここまで整えて売るとこう」
  • 「買取再販にするとこう」

という複数シナリオの数字を出すことができます。

古い契約が残る物件は、

  • 契約だけ見ても分からない
  • 建物だけ見ても分からない

「複合的な判断」が必要なため、
リフォーム会社・不動産会社・司法書士・弁護士などの連携が
特に重要になる分野です。


専門家コメント(ホームワーク株式会社)

ホームワーク株式会社
(賃貸物件の再生・買取再販を多数手がけるリフォーム会社)

「古い賃貸借契約が残る物件のご相談では、

  • 『入居者さんとは長い付き合いだから、あまり契約に口を出したくない』
  • 『でも、このままでは売れない気がして不安』

というお話をよく伺います。

私たちがまずお伝えするのは、

  • すぐに契約を“いじる”必要はない
  • ただし、“今どうなっているか”を紙の上で整理することは避けて通れない

ということです。

そのうえで、

  • 契約の曖昧さが“致命傷”なのか、“工夫でカバーできるレベル”なのか
  • オーナー様自身が再生・保有を続けるべきか、どこかのタイミングでバトンを渡すべきか
  • 入居者さんを極力不安にさせずに、どこまで整えられるか

を一緒に検討していきます。

古い契約があるからといって、
『売れない』『どうしようもない』と決めつける必要はありません。

大事なのは、

  • 現状を“見える化”する
  • 売却・保有・再生・買取といった選択肢を数字で比べる
  • オーナー様の年齢・家族構成・将来のライフプランもふまえて方向性を決める

というステップを踏むことです。

『契約書も古いし、建物も古いし、正直どこから手をつけていいか分からない』
という段階でも大丈夫です。
そこから一緒に整理を始めるのが、私たちの役割だと考えています。」


よくある質問(FAQ)

Q1. 契約書が見つかりません。この状態でも売却できますか?
A. 売却自体は可能ですが、リスクが見えない分だけ買主からの評価は厳しくなります。
まずは、

  • 入居時期・家賃・更新時のやり取り
  • 敷金の額・これまでのトラブル有無
    などを整理し、可能であれば入居者と話し合いながら「現状の合意内容」を書面に落とすことから始めるのがおすすめです。

Q2. 古い契約を「全部新しくしないと」売れませんか?
A. 必ずしもそうではありません。
リスクの大きさ・物件規模・売却価格などを踏まえ、

  • 最低限の覚書だけ作る
  • 整え方の「方針」だけ示してそのまま売る
    など、段階的なやり方もあります。
    どこまで整えるべきかは、専門家と一緒に見極めるのが現実的です。

Q3. 家賃が相場よりかなり安いのですが、売る前に値上げしたほうがいいですか?
A. 無理な値上げはトラブルの原因になります。

  • まずは周辺相場と差額を把握
  • 入居者との関係性・入居年数・生活状況も考慮
    したうえで、「今、値上げをする合理性があるか」を慎重に検討する必要があります。
    場合によっては、“安い=長期安定”として評価してくれる投資家に、そのまま売る方がスムーズなこともあります。

Q4. 退去してもらってから売ったほうが高く売れますか?
A. 好立地のファミリー物件などでは、「空室にして実需向けに売った方が高い」ケースもあります。
ただし、立退きには

  • 立退料
  • 交渉の時間・精神的負担
  • 失敗リスク
    が伴います。
    立退き前提で動くかどうかは、「数字」と「現実的な成功可能性」の両方を見て判断すべきです。

Q5. サブリース(家賃保証)に出している部屋も、古い契約だと問題になりますか?
A. サブリース契約自体の内容(期間・賃料改定・中途解約条件など)が重要です。
古い契約でオーナー側に極端に不利な条件が残っている場合、

  • 買主がその条件のまま引き継ぐことを嫌がる
  • 融資評価が厳しくなる
    といった形で売却に影響する可能性があります。

Q6. リフォーム会社に相談しても、契約の整理なんてしてもらえるのですか?
A. ホームワーク株式会社では、司法書士・弁護士・不動産会社と連携しながら、

  • 契約内容の棚卸し
  • 建物状態と収支のシミュレーション
  • 「売る・保有・再生・買取」の比較検討
    をセットでお手伝いしています。
    契約そのものの法的判断は専門士業が行いますが、
    現場感覚と数字をつないで整理するのが、私たちの役割です。

Q7. 何から相談すればいいか分かりません。最初に準備すべきものは?
A. 次の3つが揃えば、初回相談には十分です。

  1. 物件の所在地と種類(区分/一棟/戸建+賃貸部分など)
  2. 手元にある賃貸借契約書・更新書類(あるものだけでOK)
  3. 現在の家賃・入居開始時期・これまでの大きなトラブルの有無

この情報をもとに、

  • 古い契約がどの程度ネックか
  • どこまで整えれば売却しやすくなるか
  • リフォーム・再生・買取など、どんな選択肢がありそうか

をホームワーク株式会社と一緒に整理していくことができます。

「古い契約があるから売れない」と思い込む前に、
まずは現状の“見える化”から始めてみてください。

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