後見制度を利用中の不動産は売却できる?手続きと注意点を解説

注意

【結論】後見制度利用中の不動産売却は「売れる」が、家庭裁判所の許可と厳格な手続きが必須

成年後見制度(後見・保佐・補助)を利用している方名義の不動産でも、

  • 原則として売却は可能です。
  • ただし、
    • 家庭裁判所の許可
    • 本人の利益最優先の価格・条件
    • 後見人等による適正な手続きと記録
      が求められ、通常の売却よりもハードルと時間がかかります。

具体的には、

  • 後見人(保佐人・補助人)が勝手に売ることはできない
  • 「売却が本人の生活・療養・財産保全のために必要」と
    家庭裁判所に説明・立証する必要がある
  • 許可がおりるまでに1〜2ヶ月以上かかることも多い

というのが現実です。

ここから、

  • どんな場合に売却が認められやすいのか
  • 実際の手続きの流れ
  • 価格や買主との交渉で注意すべきポイント

を、順番に解説します。


目次

成年後見制度と不動産売却の基本

成年後見制度とは(ざっくり整理)

判断能力が不十分な方(認知症・知的障がい・精神障がいなど)が、
不利益な契約をしてしまわないように、

  • 裁判所が選任した「後見人・保佐人・補助人」が
  • 本人の代わりに、または一緒に
  • 契約や財産管理を行う制度

です。

類型は大きく3つあります。

  • 後見:判断能力がほとんどない
  • 保佐:判断能力が著しく不十分
  • 補助:判断能力が不十分な場合がある

このうち「後見」で選任された成年後見人は、
本人の財産(預貯金・不動産など)を包括的に管理・処分する権限をもちます。

ただし、不動産の売却のような 「重要な財産行為」 には、
原則として家庭裁判所の許可が必要です。

なぜ裁判所の許可が必要なのか

不動産は、多くの場合

  • 本人の総財産の中で非常に大きな割合を占める
  • いったん売却すると後戻りしにくい

ため、

「本当に本人の利益になる売却か?」
「後見人等が勝手に不利な取引をしていないか?」

を第三者である家庭裁判所がチェックする、という仕組みになっています。


どんな場合に不動産売却が認められやすいか

家庭裁判所が許可の可否を判断する際に重視するのは、
あくまで「本人の利益」です。

許可が出やすい典型的なケース

  • 今後住む予定のない自宅・空き家を売り、
    介護施設の入居費用・生活費に充てる
  • 老朽化して危険な家を取り壊して売り、
    管理負担とリスクを減らす
  • 誰も住まない実家・遠方の不動産を整理し、
    固定資産税・管理費の負担を減らす
  • 維持できない投資用不動産を処分し、
    安全な金融資産に組み替える

など、「売却することで本人の生活・介護・資産保全が明らかに改善する」
と説明できるケースです。

許可が出にくい・慎重に判断されるケース

  • 後見人側の都合(相続人の節税・相続トラブル回避など)が前面に出ている
  • 本人が住んでいる自宅を売却し、
    住替え先・今後の生活設計があいまい
  • 本人が生前から強い思い入れを持っていた不動産を、
    明確な理由なく売ろうとしている

こうしたケースでは、
売却の必要性・代替案・本人の意思などについて
より詳しい説明が求められ、場合によっては不許可となることもあります。


後見制度利用中の不動産売却の流れ(6ステップ)

ここでは「成年後見人が本人名義の不動産を売る」ケースを前提に
典型的な流れを整理します。

ステップ① 売却の必要性・方針を整理する

まず、後見人(保佐人・補助人)は、

  • なぜ売却が必要なのか
    • 施設入居費用の確保
    • 生活費・医療費が預貯金だけでは足りない
    • 管理できない不動産の処分
  • 売らない場合、どんなリスクがあるのか
  • 売却後のお金をどう活用するのか(使途のイメージ)

を整理します。

この「売却の理由」は、
後で家庭裁判所への申立書に具体的に書くことになります。

ステップ② 不動産会社に相談・査定依頼をする

次に、不動産会社に対して

  • 後見制度利用中であること
  • 後見人として売却を検討していること
  • 家庭裁判所の許可が必要であること

を伝えたうえで、

  • 相場査定(いくらくらいで売れそうか)
  • 売却方法(仲介/買取/買取保証など)
  • 売却にかかる期間の目安

を確認します。

このとき、

  • 不動産会社からの「査定書」「価格根拠」の資料
  • 将来予定している売買契約書の案(ドラフト)

などは、そのまま家庭裁判所への申立資料としても活用できます。

ステップ③ 家庭裁判所へ「不動産売却の許可申立て」

後見人は、管轄の家庭裁判所に対して
「不動産処分許可申立書」 を提出します。

【主な提出書類の例】

  • 許可申立書(売却の理由・必要性・条件などを記載)
  • 不動産の登記事項証明書・固定資産税評価証明書
  • 売却予定価格や査定書
  • 売買契約書(案)や重要事項説明書(案)
  • 本人の収支状況(預貯金・年金・生活費・介護費用など)
  • 今後の生活設計や施設入所計画の資料 など

裁判所は、これらの資料を見ながら

  • 売却理由の妥当性
  • 売却価格が相場とかけ離れていないか
  • 売却後の資金の使い道が本人の利益に適っているか

を総合的に判断します。

※保佐人・補助人の場合は、本人の同意や
「同意権付与・代理権付与」の範囲との関係も確認が必要です。

ステップ④ 家庭裁判所の審理・許可

申立後、家庭裁判所は

  • 書面審理
  • 必要に応じて後見人・本人への面談
  • 場合によっては親族からの意見聴取

などを行い、
売却許可/不許可/条件付き許可 を決定します。

【期間の目安】

  • 裁判所や案件の内容によりますが、
    おおむね1〜2ヶ月程度かかることが多いです。
    複雑なケースではさらに長引くこともあります。

許可が出ると、「許可審判書」(またはその正本・謄本)が交付されます。
この書類は、売買契約時に買主側・金融機関・司法書士からも
提示を求められる重要書類です。

ステップ⑤ 売買契約の締結

家庭裁判所の許可を得たうえで、
後見人は「本人を代理して」売買契約を結びます。

  • 契約書上の売主欄
    → 「本人氏名(成年被後見人)/代理人 成年後見人 氏名」といった記載
  • 契約書の署名押印
    → 後見人が自分の名前で行う(本人の実印ではなく、後見人の印鑑)
  • 契約概要
    → 価格・引渡時期・付帯設備・契約不適合責任など、一般の取引と同様

この段階で、

  • 許可審判書
  • 後見登記事項証明書(登記事項証明)

などを、買主側・司法書士に提示するのが一般的です。

ステップ⑥ 決済・引き渡し・売却代金の管理

決済日には、

  • 売却代金の受領
  • 所有権移転登記の申請
  • 鍵や関連書類の引き渡し

などを行います。

受け取った売却代金は、
後見人名義ではなく「本人名義の口座」で管理するのが原則です。

  • 後見人は、売却代金の使途(生活費・介護費・医療費など)を
    家庭裁判所への報告書(財産目録・収支報告)で説明する義務があります。
  • 後見人自身や相続予定者のために、不当に流用することは認められません。

後見制度利用中の不動産売却で注意すべきポイント

注意点① 「価格が安すぎないか」を特に厳しく見られる

家庭裁判所は、

  • 相場より明らかに安い価格で売却しようとしていないか
  • 親族や特定の第三者に有利な条件で売っていないか

を厳しくチェックします。

そのため、

  • 少なくとも2社以上の査定を取り、
    価格根拠を説明できるようにしておく
  • 親族間売買の場合は、
    第三者への売却案と比較しても不当に安くなっていないか慎重に検討

といった配慮が重要です。

注意点② 後見人は「相続税対策」よりも「本人の利益」が最優先

よくある誤解が、

  • 「相続税対策のために売っておきたい」
  • 「将来の相続人のトラブルを避けるために売りたい」

といった相続人側の論理だけで売却を進めようとするケースです。

成年後見人の役割は、
あくまで本人の現在および近い将来の利益を守ることであり、
将来の相続人の利益を最大化する義務はありません。

なので、

  • 「相続税が減るから」だけでは売却理由として弱い
  • 「今後の介護費・生活費を安全に確保するため」という形で
    本人の生活設計と結びつけて説明する必要があります。

注意点③ 時間がかかる前提でスケジュールを組む

  • 家庭裁判所の許可申立
  • 審理・審判
  • 買主との価格交渉・契約調整

などで、通常の売却より数ヶ月長くかかることも珍しくありません。

  • 施設入所の入居金支払い
  • 介護費用が大きく増えるタイミング

などと売却時期を合わせたい場合は、
かなり余裕をもって準備を始めることが大切です。


専門家コメント

ホームワーク株式会社 代表取締役(不動産売買・相続・成年後見サポート担当)

  • 高齢者の住み替え・施設入所に伴う自宅売却などを年間多数サポート
  • 司法書士・弁護士・税理士と連携し、成年後見利用中の売却案件にも対応

コメント

「成年後見制度を利用している方の不動産売却は、

  • 価格だけでなく、
  • 家庭裁判所の許可手続き
  • 本人の生活設計や介護方針

までセットで考える必要があり、
どうしても“普通の売却”よりも手間と時間がかかります。

一方で、
施設入所費用・医療費・今後の生活の安心を考えると、
不動産を現金化することが“本人にとって最善”となるケースも多く、
裁判所もその点を踏まえて柔軟に判断してくれます。

大切なのは、

  1. まず“不動産の価値・売却可能性”を冷静に把握する
  2. そのうえで、司法書士や弁護士と連携しながら
    裁判所への申立てと手続きの段取りを組む

という流れを、早めにスタートすることです。

『後見人になったけれど、不動産をどう扱っていいか分からない』
という段階からでも構いません。
不動産会社と法律の専門家が一緒に入ることで、
ご本人にとっても、ご家族にとっても納得感のある形で
売却・活用の道筋をつけやすくなると感じています。」


よくある質問(FAQ)

Q1. 後見人になったばかりですが、不動産をすぐ売ってもいいですか?
A. 可能ですが、必ず家庭裁判所の許可が必要です。
就任直後は、まず本人の財産状況・生活状況の把握を優先し、
売却の必要性が整理できてから申立て・売却を検討するのが一般的です。

Q2. 家庭裁判所の許可なしに売却契約をしてしまったらどうなりますか?
A. 無権限の処分として、無効・取り消しの対象になる可能性があります。
また、後見人自身が責任を問われるリスクもあります。
必ず事前に家庭裁判所の許可をとったうえで契約してください。

Q3. 本人が施設に入っており、自宅には戻らない見込みです。それでも売却に問題はありませんか?
A. むしろそのようなケースは、
施設費・生活費の確保や空き家リスクの観点から、
売却が認められやすい類型です。
ただし、売却後の資金の使い道も含めて
家庭裁判所に丁寧に説明する必要があります。

Q4. 親族(子ども)が買主になる形で、自宅を安く買い取ることはできますか?
A. 親族間売買自体は原則として可能ですが、
相場より明らかに安い価格は
「本人に不利」とみなされ、家庭裁判所の許可が出ない可能性が高いです。
第三者への売却案との比較資料などを用意することが重要です。

Q5. 売却代金を、将来の相続人(子どもや兄弟)のために運用してもいいですか?
A. 後見人の財産管理はあくまで本人のためであり、
将来の相続人のための運用を目的とすることはできません。
生活費・介護費・医療費など、本人のために使うことが前提です。

Q6. 保佐人・補助人の場合も、家庭裁判所の許可が必要ですか?
A. 不動産売却が「保佐人・補助人に与えられた権限の範囲かどうか」によります。
一般に、重要な財産行為にあたるため、
裁判所の許可や本人の同意が求められるケースが多く、
個別に司法書士・弁護士へ確認するのが安全です。

Q7. 後見制度を利用する前に、不動産を売却しておいた方がいいですか?
A. 一概には言えませんが、

  • 本人にまだ十分な判断能力がある
  • 売却の必要性・条件を理解し、本人の意思で決められる
    のであれば、その段階で売却しておく方が
    手続きはシンプルです。
    ただし、本人の意思確認や契約能力の有無に疑義がある場合は、
    後見開始後に正規の手続きで進めるべきです。

Q8. どの専門家に相談すべきか分かりません。まずは誰に相談すればいいですか?
A. 入口としては、

  • 不動産会社:売却可能性・相場・スケジュールの把握
  • 司法書士・弁護士:後見制度・裁判所手続き・契約実務
  • 税理士:売却に伴う税金(譲渡所得税など)の試算

のうち、「いちばん相談しやすいところ」からで構いません。
最近はこれらが連携してワンストップ対応している事務所も増えています。

Q9. 裁判所の許可が下りないこともありますか?
A. あります。
とくに、

  • 売却理由が本人の利益と結びついていない
  • 価格が不当に安い
  • 代替手段(賃貸・一部売却など)の検討が不十分

と判断されると、不許可になることがあります。
事前に司法書士・弁護士に相談して申立書を整えることで、
不許可リスクを大きく減らせます。

Q10. まず何から始めればいいですか?
A.

  1. 本人の財産状況(不動産・預貯金・年金・生活費・介護費)を整理する
  2. 不動産会社に相場査定を依頼し、「売った場合のイメージ」を把握する
  3. その情報を持って、司法書士・弁護士に「売却許可申立」の可否や流れを相談する

というステップがおすすめです。
「売るかどうかまだ決めていない」という段階でも、
情報を揃えてから判断した方が、後戻りやトラブルを防ぎやすくなります。

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